ハリのある声で喋っても声筋は鍛えられる

そこでオススメしているのが「昔、歌えていた昭和歌謡を、風呂場で歌うこと」です。名付けて「風呂カラオケ」。拍子抜けするほど簡単なのに、効果は折り紙付きです。

風呂カラオケ イラスト:佐原苑子

湯船につかり、リラックスした状態で歌う。これは最高に楽しいのどの筋トレになります。そもそも風呂場は湿気が多い空間ですから、これほど声筋にとって理想的な環境はありません。コツは、歌詞を覚えている曲を、繰り返し歌うことです。

「ここの歌詞、いつも忘れてしまうんだよなぁ」という曲だと、歌詞を追うことに必死になり、のどの調子に気を配る余裕も失われてしまいます。ですから、歌詞を完全に覚えている曲を選んでください。

同じ曲を繰り返し歌うことにも意味があります。「今日は、一番高いキーを出せなかった」などと、声の変化に気付きやすくなるからです。いつも同じキーから歌い始めるようにしていると「今日は、高い音が出ないなぁ」なんて、のどの異常に気付きやすくなりますよ。

もうひとつやってほしいのが、「の↑の↓発声法」です。

の↑の↓発声法 イラスト:佐原苑子

 発声学的にいうと「N音」が付く音は、鼻に抜けるため、非常によいとされています。また、「小さい声↑大きな声↓小さな声」と、ひと息で声量を変えることで、声筋を伸縮させる優れた効果が見込まれます。

呼吸も姿勢も整う包括的なエクササイズで、どのようなのどの状態の方にでもおすすめ。「血圧の乱れが整う」と指摘する専門家もいるほどです。道具不要、いつでもどこでも手軽に行えるのも魅力です。

  1. 口を小さくすぼめて、声が共鳴する部分を開くようイメージします。
  2. 「のー」を低音から高音まで、鼻に抜けるように発声します。このとき、途中で地声から裏声に切り替えてください。
  3. 「のー」を高音から徐々に低くしていきます。途中で裏声から地声に切り替えてください。
ごく簡単なトレーニングで声筋は鍛えることができます

10回を1セットとして、1日1セットでOK。続けることが大事です。途中で音声が途切れないようにしましょう。特に「地声」と「裏声」の変換点は、難しいもの。最高音では音声が出ないことがあっても、内筋(声帯)は伸びているので、そのまま続けてください。

肺活量を増やすことが目的ではないので、発声している時間を延ばす必要はありません。声筋の筋力が増えるにつれ、発声時間は自然に長くなります。こうすることで声にハリが戻り、足腰もしゃきっとするはずです。老若男女にぜひお試しいただきたいところ。

またハリのある声で話すときは、腹筋や背筋を自然に使います。ですから、意識的にハリのある声を出すことは、ジムでトレーニングをしているのと類似の健康効果が期待できるのです。

「運動なんて、とてもできない」という方も心配ありません。これから始まる新しい新シーズンも、ハリ声で元気よく話すことを日課にしてみてはいかがでしょうか。