エネルギー政策の誤りを認めない欧州諸国

このように、ウクライナの戦争が起きた大きな理由の一つは、間違いなく欧州のエネルギー政策の失敗にあるわけです。脱炭素ばかりを追い求めたものの、再生可能エネルギーだけで足りるはずもなく、実態としてはロシアのガスへの依存をどんどん高めて、エネルギーの安定供給という根本がお留守になっていました。

ところが、欧州諸国の政府は、今のところエネルギー政策が過っていたことを認めておらず、脱炭素という看板も下ろしていません。それどころか、ドイツなどは「化石エネルギーに頼ってきたことが誤りだった。今後は再生可能エネルギーをさらに推進する」などとしています。これではますます高コスト体質になり、エネルギーの安定供給が脅かされることは目に見えています。

▲エネルギー政策の誤りを認めない欧州諸国 写真:spiegel / PIXTA

それに、太陽光発電も風力発電も電気自動車も、中国依存を高めるだけです。対ロシア依存を減らすためとして、対中国依存が高まるのでは意味がありません。

欧州の「ロシア中毒」は、ウクライナでの戦争の原因になったわけですが、では欧州の「中国中毒」は、これからいったい何についての原因となるのでしょうか。

台湾海峡での戦争でしょうか。あるいは、中国による日本の属国化でしょうか。

東アジアで中国と台湾、あるいは中国と日本の対立が激化したときに、欧州はどちらの味方になるのでしょうか。

欧州は中国との経済関係を断ち切って、敢然と自由陣営側にとどまってくれるのでしょうか。

その決意が疑われるとき、台湾も日本も一段と危うくなります。これがウクライナ戦争から学んだ“教訓”なのです。

欧州諸国がこれまでのエネルギー政策の誤りを認めないのは、今の政権がいずれも2021年末まではネット・ゼロ(欧州では脱炭素のことをこう言います)を掲げていたからです。急に前言を翻すわけにはいかないので、今のところはエネルギー危機をすべてプーチンのせいにしています。つまり「エネルギー危機はすべてプーチンという一人の人物のせいで起きた」というわけです。

しかし、エネルギー価格の高騰はウクライナでの戦争以前の2021年からすでに始まっていました。そのことからも明らかなように、今のエネルギー危機も本質的には欧州のエネルギー政策の“大失敗”が招いたものだったのです。

欧州は今はまだ誤りを認めていませんが、いくら威勢よく再生可能エネルギー倍増などと言っていても、ネット・ゼロ政策の破綻は今後ますますはっきりしていくでしょう。方針転換せざるをえないときが来るのは、そう遠くないと思います。