フレアはタイミングと距離が大事
桜林 映画について聞かれることは他にもありますか?
小野田(空) もう3回見た、4回見たという人から質問がきますが、私は1回しか見ていません(笑)。いろいろ専門的な方がいらして、私は答えられる限りで答えています。
たとえば、敵の核施設はあたかも火山の中のようなところにあるため、急上昇したあと、機体を反転させて斜面を急降下するわけですが、その際、なぜ反転するのかという質問がありました。
それはパイロットにかかるマイナスGを防ぐためです。
基本的に戦闘機は、マイナスGになると体が浮いて操縦しにくくなります。また、戦闘機自体の強度もマイナスGのほうが弱いという事情もあるので、ジェットコースターのように急降下するときには、反転することによりマイナスG(浮く)をプラスG(下に押される)に変えるのです。
それから、もう一つよく聞かれるのが、地対空ミサイルを避けるための「フレア」についてです。
フレアというのは、飛行機のエンジンが出す熱線(赤外線)を追尾するミサイルに対して、誤誘導させる目的で放射する強い赤外線の囮(おとり)のことで、戦闘機のお尻のほうから出します。
マグネシウムと硝酸ナトリウム系の混合物を燃焼させてつくり、瞬間的に燃焼温度が2000~2400Kの高温となり、広帯域の赤外線スペクトル分布をつくり出すのです。短射程の地対空ミサイルは、戦闘機の熱を追う赤外線誘導タイプのミサイルが多いので、だいたいそれで防ぐことができます。
ただし、出すタイミングが重要で、撃たれたミサイルが、とある距離に近づいたときに急旋回して自機の赤外線の放射方向を変えた瞬間、フレアを射出してミサイルを引き寄せるのです。普通に真っ直ぐ飛んでフレアを出しても、ミサイルはフレアのほうに誘導されないわけです。
桜林 じゃあ、かなりタイミングと距離が大事なんですね。
小野田(空) 距離があんまり離れているところでフレアを出しても、ミサイルを引き離すことはできません。だから、近すぎても駄目だし、遠すぎても駄目。映画でも急旋回しながらフレアを出してますね。
桜林 出せばいいというわけではないんですね。
小野田(空) フレアは多く積めないので、上手に使わないとあっという間になくなってしまいます。
桜林 技術が問われるんですね。