これからも読書支援をしていきたい

――栗澤さんの後継者というか、やっていることを誰かに受け継がせていくような立場になってきてますよね。

栗澤 欲しいんですけど、まず無理だなと思っています。この働き方はもう古いでしょ!

――(笑)。

栗澤 朝から夜まで働いて、その時点で普通に労働時間オーバーしていて、プラス、夜も飲みに行ってとなると……、他の人には真似できないとは思うんですよね。ただこの前、同じ歳で漆関連の会社を経営している方と話をしたんですけど、やっぱり50歳になると、後継者もそうなんですけど、自分の持っているものをとりあえず出し切りたくなるんですよ。

これがあと10年~15年と若ければ、自分の名を売りたいとか、会社内でポジションを上げたいとかプラスアルファがつくんでしょうけど。50歳を過ぎていくと、この働き方で体が何年もつかなと考えたとき、それまでに自分の持っているノウハウとか、やり方などを出し切りたいというのが一番に出てくるんですよね。その流れで、出し切ったものを受け継いでくれる人が出てくればうれしいな、というのがあります。

――これだけイベントをやっていて、これまでになかった仕事を作られて、さわや書店さんの売上の一つになっているとしたら、何かしら持続可能な形にしないと……。

栗澤 どうしても個人商店の小さな書店となると、やっぱり厳しいですね。新入社員を採用して育てていくというのは、ちょっと難しいかもしれません。例えば、雨漏りしないように普段から目を光らせて、常に補強していくというのは、やっぱりできないんですよ。雨漏りしてから、そこを補強するという感じで。それで応急処置ができなければ、壊すしかないというか。

――なかなか難しいですね。本に書かれていましたが、お寺とかでの出張販売だったりでは、その分店からの発注とかの仕組みが課題だと。それこそ、若い人によるITの知識とか技術で改善できるといいですね。さわや書店さんでなくても、盛岡にあるベンチャー系の会社とかで作れたら。

栗澤 そうですね、はい。

――最後に、栗澤さんの野望を教えてください。

栗澤 野望(笑)。あるにはありますね。本にも書いていますけど、副教材を作ったり、読書普及を進めていきたいという思いがあります。

――具体的に動いていることはあるんですか?

栗澤 いや、一歩進んで三歩下がるみたいな感じですね(笑)。それで言うと「象と花」というプロジェクトにも関わっているんです。本を通して病気とたたかう子どもたちの成長を支えたい、という活動です。それから、コロナが流行したあとに大学生の貧困問題が出てきたんですけど、大学生向けの支援活動とか、そういう世代別の読書支援なども進めていきたいなと考えています。

――出版業界にとっても、読書支援は重要なことですよね。

栗澤 そういった活動を進める場合には、行政と一緒にやっていくのが理想だと思うので、それも踏まえて、もっと一緒に仕事をできればいいなというのはあります。そうすると、地域にとっても欠かせなくなってくるじゃないですか。早くそのポジションを作りたいと思っています。

――行政とのつながりも作っていると。

栗澤 はい。盛岡市が進めている移住促進の「盛岡という星で」というプロジェクトがあるんですよ。市役所の都市戦略室が主体的に動いているんですけど、そことやり取りしている方から声かけてもらって、そこでPOP書き教室の講師をやって、という感じで連携を始めています。

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