日本の定食屋に必ずあると言ってもいいのが「しょうが焼き」。嫌いな人はいないのではないでしょうか? それだけに、味付けもお店や家庭によって異なりますし、使っている肉も意外とバリエーションが豊富です。今回は「かたまり肉料理にはロマンがある」と話す人気ユーチューバーCOCOCORO・こと大西哲也氏が、かたまり肉を使ったしょうが焼きのレシピを紹介します。

※本記事は、大西哲也​:著『豚かたまり肉を買ってみました』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

しょうが焼きとは「タレを食べる料理」である

今から、しょうが焼きをほめたいと思います。

あなたはなぜそんなにおいしいのか。あなたのせいで、ごはんが止まらない。いつも普通の顔をしてどこにでもいるのが、また憎らしい。

しょうが焼きの原型をたどると、獣の臭いを消したり、防腐や薬用の効果を期待して、豚肉としょうがという組み合わせが生まれたといわれているようです。ということは、この組み合わせは昔から一般的だったと考えられます。

それが日本的な甘辛い味付けと出会ったことで、最高にうまい料理へと昇華しました。日本ではしょうが焼きを嫌いな人を探すほうが難しいほど、人気かつ定番の豚肉料理ですが、味付けもお店や家庭によって異なりますし、使っている肉も意外とバリエーションが豊富です。

今回はせっかくかたまり肉から作るんですから、自分がいつも食べているしょうが焼きより厚めにカットすることから始めましょう。

▲かたまり肉から「しょうが焼き」をつくる! イメージ:rogue / PIXTA

まずは肩ロースかロースのかたまり肉から、肉を切り出します。スーパーで売っている豚バラや小間切れなどの薄い肉で作ることが多かったと思いますが、せっかくなので5~10mmくらいの厚さでカットします。これは一歩間違えればトンテキクラスの厚みですが、それくらいの厚みと食べごたえがほしいですね。これくらいの厚さだと、噛んだときの満足感もたっぷりあります。

しょうが焼きがしょうが焼きたる理由は「タレ」にあります。しょうがをたくさん使った甘辛いタレは、日本を代表する調味料といえるでしょう。使う材料は本当に少ないけれど、それゆえシンプルな力強さがありますよね。しょうがの刺激が火を通すことで丸くなって、なんともいえないうま味を醸し出します。

しょうが焼きが頭に浮かんだら、まずタレの香りが脳天を直撃します。すると、ごはんを食べたくなります。

豚肉の持つうま味に、しょうゆの香ばしさが混じり、さらにしょうがの清涼感のおかげで、最後まで油っぽさを感じることなくいただけます。私はしょうが焼きを食べていて、途中で飽きたことは一度もありません。

しょうが焼きの魅力はタレです。言い方は乱暴ですが、タレがおいしければ、しょうが焼きはおいしくなります。どんなに安い肉だって、それなりのおいしさになります。タレの実力が、しょうが焼きの評価を決すると言ってもいいでしょう。

なんてことない外観なのに、しょうが焼きがめちゃくちゃおいしい店は、間違いなくタレにこだわっています。それは肉のレベルによることなく、おいしいしょうが焼きができるということです。

これまた乱暴な言い方をしますが、しょうが焼きとは「タレを食べる料理」であると言っていいかもしれません。

しょうが焼きの目的は、ごはんを食べ進めることにあるわけですから、もはやしょうが焼きにおける肉は、タレをごはんにまとわせる刷毛のようなものです。そうなると、タレは肉にしっかりとからんでいてほしいですね。

ということで、しっかりとタレをからませるしょうが焼きを目指します。

まずは肉に塩胡椒します。厚めにカットした肉は筋切りをしたほうがいいでしょう。適度な厚みを持った肉は火が入ると反りやすくなり、見た目も悪くなりますし、タレのからみも悪くなります。

肉は火を入れる前に小麦粉をふって衣をつけたほうがタレがしっかりからみます。タレをどれだけ肉にまとわせるかに集中しましょう。

小麦粉をふって火を入れることで、「おいしい方程式」ともいえる「メイラード反応」が起きやすくなります。また衣があることで、肉に熱がゆっくり入り、パサパサになりづらくなります。もちろんカロリーは上がってしまいますが、タレがよくからみ、ソースにはとろみがつきます。衣の力はやはり偉大といえるでしょう。