先人たちが気づいた法則を本などを通して学ぶ

演繹法は、すでに認知されている法則・ルール・根拠(大前提)に、目の前の事実をあてはめて結論や未来を推論することで、三段論法とも言います。たとえば「部長はSDGs関連の企画ならよく通す(大前提)」→「今回の企画はSDGs関連だ(小前提/事実)」→「だから部長の承認が得られるだろう(結論)」といった推論の仕方です。

演繹法のコツは2つあります。

まず、大前提となる法則がそもそも正しいのか、もしくはどれくらい正しいのか常に意識することです。大前提が科学的事実や法令のようなものであれば間違えようがないですが、“よく通す”とか“よく売れる”といった(帰納法から導かれた)一般論を大前提にする場合、“よく”の度合いがわからないままだと結論の精度がわかりません。

大前提となる一般論の精度を高めたいのであれば、先ほどの帰納法に戻り、サンプルデータを増やすしかありません。

もうひとつのコツは、大前提となる法則をどれだけストックしているかです。ストックしている法則が多ければ多いほど「このままいくとこうなりそうだ」という推論をする機会が増えます。

では、どうやってストックを増やすかというと、こちらもやはり普段から帰納法で方程式を自分なりに見出すことと、先人たちが気づいた法則を本などを通して学ぶことです。

▲先人たちが気づいた法則を本などを通して学ぶ イメージ:Kazpon / PIXTA

結果に対して「なぜだろう?」と考える

アブダクションは仮説的推論とも呼ばれ、目の前で起きた事象(結果)に対して既知の法則をあてはめ、その「原因」を推論する方法です。演繹法と混同されやすいですが、演繹法は未来を推測するもので、アブダクションは過去を推測するものです。

たとえば、知人がある会社を退職したとして(結果)、別の人から「その会社はノルマのきつさと離職率の高さで有名だ」という情報(法則)を仕入れていたのであれば、「知人もノルマがきつくて退職を決意したのかもしれない」という仮説が立てられます。

アブダクションも帰納法と同じように、目の前で起こる事象に対して意識的に観察することがすべてのスタートです。「彼、会社を辞めたそうだよ」と聞いたときに「ふ~ん」と受け流すのではなく、「なんで辞めたんだろう?」と反射的に思えるかどうかが重要です。トヨタの生産方式の一環である、問題を発見したら「なぜを5回繰り返す」が有名ですよね。

▲結果に対して「なぜだろう?」と考える イメージ:metamorworks / PIXTA

以上、3つの推論法のコツを紹介しましたが、聡明な方であればそこに共通点を見出すことができたはずです。

共通するのは、法則・ルール・パターンなどのストック量が多いほど推論力が上がるということです。

ビジネススクールでは、さまざまな企業の成功事例、失敗事例を分析しますが、これは帰納法で法則を導き出すため。この法則を実務においてあてはめていき、演繹法で未来を推論したり、アブダクションで原因を推論したりしていきます。

肝心なのは大量の法則・パターンを頭の引き出しに入れておくことです。インターネットのおかげで「知識」のストックには意味がないと言われる時代になりましたが、自分流の方程式をもつことが重要なのです。