俺はウーバーイーツ配達員

コロナ禍になり芸人の仕事はもちろん、イベント大道具のバイトもなくなり稼ぎ口が何もなくなった俺は、「手軽に始められる」と知り合いから聞いて、ウーバーイーツのバイトを始めた。

聞けば、スマホと自転車があれば誰でも始められるらしい。タイムカードもなければ年下の店長に怒られることもない。40分ほどの簡単な講習と説明を受けたら、黒いキャリー用バックを貸し出してもらってバイトが始まる。

デリバリー業界はコロナで恩恵を得た数少ない業種だと思う。ウーバーイーツで食事を頼んだほうが確かに感染リスクは低いだろう。注文はひっきりなしで、新宿・渋谷・中野などいろんな場所で宅配した。始めたての頃は、ピックアップしてからどこの場所に飛ばされるかわからないシステムだったから、いろいろと苦労したものだ。

お店で料理をピックアップして配達開始のボタンをスライドすると、ピンの位置が表示され、ようやく自分の配達先がわかる仕組みだった。

中野駅でピックアップして、恐る恐るスマホを見ると配達先は千駄ヶ谷。「最悪だー!」と思いながら6段変則のママチャリをこぐ。配達を始めた当初は自転車にあまり乗らなかったので、夏場はすぐに足がつった。しばらく休んでまた自転車をこぐ。

ウーバーイーツの配達員は距離より件数を稼ぎたいと思っている。なぜなら30件配達すると〇千円、50件配達すると〇千円、80件配達すると〇千円と、通常の配達料に加えて、プラスで報酬がもらえるシステムだからだ。つまり、距離よりも件数を稼げば収入も多くなる。

距離が増えると、多少は金額が増すが、近くても遠くても一件は一件。なるべく近場で件数を稼いだほうが、断然効率がいい。

中野坂上のマクドナルドが得意先なのだが、ピックアップして、すぐ隣りのマンションに届けたこともある。自転車にも乗らず歩いて届けられる距離なので、自分で買いに来ればいいのにとおかしくなってしまった。

ウーバーイーツの配達をして良かったことは、ときどき人の優しさに触れられることだ。置き配のオーダーを届けた玄関先に「暑い中ありがとうございます。コロナを乗り切りましょう」と書いた手紙が添えてあったときはウルッときてしまった。暑い夏場に「これ飲んで頑張ってください」と、よく冷えたポカリスエットをもらったときは、本当に命を救われた気分だった。

配達先の人が「TAIGAさんですよね! 写真撮ってください!」なんて言ってもらえることもあった。写真を撮ったらチップをくれることも多かった。ピックアップに行った店でも「TAIGAさん頑張ってください!」とアメをくれる店員さんがいたり、お茶を出してくれたりと、優しい店員さんに触れ合えることもあった。