ソーシャル時代の人付き合い。「頑張る」はいいけれど、「頑張りすぎ」はダメ! “現役看護師”で女性僧侶・玉置妙憂さんが教える、「頑張りすぎない考え方&実践法」が満載の心がラクになる生き方。

※本記事は、玉置妙憂:著『頑張りすぎない練習 無理せず、ほどよく、上手に休む――』(マガジンハウス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

現役看護師でもある女性僧侶・玉置妙憂さん

まわりからの「評価」を期待しない

ツイッターやフェイスブックなど、いわゆるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使っている方が増えてきました。私も使っています。

SNSを見ていると、「本当にみんな自分のことが好きなんだなぁ」と思います。投稿をして、「いいね!」をたくさんもらうのは確かに楽しいことのように見えます。

でも、これって本当に「自分が好き」ということなのでしょうか? 誰かから「いいね!」をもらわないと、自分を好きになれない……。そういうところがあるような気がします。

まわりからの「評価」ばかりを期待する―。このような状態が続くと、何が起こるでしょうか。他人さまからホメられ続けるのは、とてもたいへんなことです。そこで「頑張りすぎ」が起こります。

アブラハム・マズローというアメリカの心理学者が、人間の基本的な欲求を、次の5段階に分けて研究したことがあります。

第1段階「生理的欲求」……生きていくために必要な、基本的・本能的な欲求
●第2段階「安全欲求」……安心・安全な暮らしへの欲求
第3段階「社会的欲求」……友人や家庭、会社から受け入れられたいという欲求
第4段階「承認欲求」……他者から尊敬されたい、認められたいと願う欲求
第5段階「自己実現欲求」……自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求

マズローは、人間にはこの5段階の「欲求」があり、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動があるとしています。そして、第1段階「生理的欲求」~第4段階「承認欲求」までは、「欠乏(けつぼう)」を埋めるための欲求で、人間がどうしても求めてしまうものだというのです。

確かに、「認めてほしい」という承認欲求は、私たちが生きていくうえで、なくてはならないものかもしれません。でも、最近のSNSを見ていると、を超しているように思えるのです。

投稿の内容がどんどんエスカレートしていく。見ているほうも、事件やトラブルなど、刺激の強いものを求めます。「いいね!」がほしくて、面白いネタを探し回る毎日を過ごす……。これほどつらいことがあるでしょうか。まさに、「頑張りすぎ」の状態です。

子どもの摂食障害の理由は「愛されていないかも…」

また、私たちは「つらいわよね。大丈夫?」と心配されることで、承認欲求を満たそうとすることもあります。

ですが、「相手にしてほしい。外からの反応がほしい」……。そういう欲求が大きくなりすぎると、身体に異変が起こることさえあるので注意が必要です。

摂食障害は、そのひとつの例だとされています。もちろん原因は他にもいろいろありますが、親子の関係がうまくいっていない場合が多いようです。子どもが、親から「愛されていない」と感じてしまっているケースです。

摂食障害の子どもをお寺で修行させると、症状がやわらぐことがあります。お寺での生活は親の目から離れた異世界。すると、完治するのは簡単ではありませんが、少しずつ食べはじめる場合があるのです。

母親や父親が困っているところが見たい。とにかく親にかまってもらいたい―。それだけが心の渇(かわ)きを満たすものとなってしまっていて、そこに向かって頑張りすぎてしまっているのが摂食障害だと言うこともできるでしょう。

そして、これはなんだか、SNSで「いいね!」をほしがる人たちに似ています。

「期待しすぎ」は、「頑張りすぎ」につながります。だから、他人さまからの「評価」をあまり頼りにしないでくださいね。まず、このことに気づいていただけたらと思います。