インボイス制度で意識すべきこと
――金融リテラシーを高めるといっても、いろいろな方法があると思うんです。特にどんなことが大切なのでしょうか?
倉田 新聞や本を読んだり、ニュースを見たりするのはもちろん、物の価値や行動経済学を知ることも大切だと思います。何か買うときも、少し立ち止まって「欲しいけど、これって本当に必要なのかな? どれくらい使うのかな?」と、思考することも大事です。僕も何かを買うときは常に考えていますね。
――お金を貯める、うまく使うって、簡単そうで難しいことだと思います。
倉田 僕の場合、1年ほど前にルンバを買ったんですけど、それが5万円だったんですよ。たとえば、毎日5分、床掃除をしたとして、ひと月だと150分になりますよね。その150分で、自分はどれくらいお金を稼げるのかを考えました。もちろん、使わない日もあるかもしれないですけど、可能な限り想像すること、未来を予測することは大事だと思います。
――お金のことについて相談されるケースも多いと思います。近年ではインボイス制度が導入されることで、個人事業主が注目を浴びていますが、フリーランスが考えるべきことはありますか?
倉田 そうですね、それだけで1冊にできるくらいの長い話になってしまうのですが…(笑)。まず大事なのは、自分の事業のことだけではなく、いろいろ調べて考えて、同業者と情報交換をするべきだということです。
――なるほど。お金の話ってしづらいものですけど、情報交換はするべきなんですね。
倉田 自分がいくらの価格をつけたらいいのかとか、 取引先はどういう無茶なことを言ってきて、それに対してどうやって断ったらいいかとか、同業者はそういったノウハウを持っているはずなので、つながりは大事にしたほうがいいと思います。
東大に行こうと思ったのは芸人だったから
――現在、倉田さんは現役東大生です。そもそも、なぜ東大に行こうと思ったんですか?
倉田 たくさん理由はありますが、今回のことでいうと、これまでお金に関する本を書いたり、子どもや大人の前でお金の話をする機会があったりしたんですけど、ほぼ独学だったんですよ。自分の中で、さらに広く学びを深めて、みんなに情報や知識を伝えていきたいという思いがありました。その学びを得るための選択肢に「大学に行く」というのがありました。
――3年間の受験勉強期間があったそうですが、心が折れることはなかったんですか?
倉田 どんどん学力が伸びていくのがわかったので、それが楽しくて、心が折れることはなかったですね!
――東大に通われて数ヶ月が経ちましたが、今のお気持ちを聞かせてください。
倉田 毎日が学びにあふれているし、語学・数学・プログラミングとか、何かに飛び抜けてできる仲間がいるので、何を話していても常に楽しいですね。今も授業の空きコマを使って取材を受けてるんです(笑)。
――ありがたいです(笑)。倉田さんの「学びたい」という強い精神力は、どこからきていると思いますか?
倉田 昔は全然なかったかもしれないです。やっぱりいま、芸人としてこの業界で働いているからじゃないですかね。やめちゃう人も多いし、才能があってもダメな人はダメだし、過酷な業界じゃないですか。才能があって、運も掴んだ人が成功していくなかで、“じゃあ、自分は何ができるのか”を考えたら、勉強だったんですよね。「勉強すらやめたら、もう何もない」という気持ちが、どこかであったのかもしれないです。
――なるほど…! 倉田さんの同期の芸人には、この本の帯を書かれたニューヨークさんや鬼越トマホークさんなど多数いらっしゃいます。彼らと切磋琢磨するなかで、ターニングポイントになる出来事はありましたか?
倉田 才能あふれる人たちを近くで見ていると、彼らと同じように戦っていたらダメだと思いました。自分の得意な分野で、 需要があるものは何かと考えたら、それがたまたま「お金のこと」だったんですよね。彼らのようなスターの同期がいなければ、僕は同じことをやり続けて、日の目を見ないまま終わっていただろうなと思います。
――そういった気づきがあったんですね。今後やってみたいことを教えてください。
倉田 今回は、15歳以上に向けての本を書いたんですけど、ボランティアの教室では、高校に行くことってあまりないんですよ。だから、高校生に向けてお金の授業をやりたいですね。