今年で90歳を迎えたドリフターズの高木ブー。現在もウクレレ演奏など精力的に活動しているが、絵を描くこともライフワークとして30年以上も続けている。彼が描いたドリフの絵が収録された『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス)が、今年3月に発売されている。

2021年に『高木ブー画集 ドリフターズとともに』を発売した際には「ドリフの魅力を絵で伝えていきたい。そこでは長さんも志村も生きてるしね」と語っていたが、残念なことに昨年10月にメンバーの仲本工事が亡くなってしまった。いつも明るく前向きな高木であるが、加藤茶と自分だけになってしまった現在の心境、そして人生の土壇場について聞いた。

▲俺のクランチ 第27回-高木ブー-

いろいろな人を見送ってきて考えること

「土壇場といえば……まさに今かな。ドリフターズが二人きりになっちゃった、ということですね。長さん、志村は病気だったけど、仲本は予期せぬことだったから……。“これから三人で頑張ろうね”と言ってた矢先だったんでね」

人生の土壇場について聞くと、そう肩を落とす高木。ただ、ずっとクヨクヨもしていられないと、すでに前を向いて動いている。イザワオフィスの公式YouTubeチャンネルでは、加藤茶と一緒に新企画「ドリフ麻雀」を6月から始めるため、練習している様子が動画で公開されている。

「加藤と一緒にやるのは楽しいですよ。でも、麻雀なんか学生時代以来やってなかったから、まあ、手が良ければあがれるかなって。あと、じつは僕、勝負ごとはあんまり興味ないんだよね(笑)。仲本と加藤と三人で馬を持っていたことがあって、それが良い馬で、けっこう勝ったんです。まあ、三人で一頭だから、そこまで儲からなかったけど(笑)」

印象に残っているのは、志村けんの追悼特番で高木が発した「志村は死なないの。ずっと生きている」という言葉だ。これはまさに生と死を超越した言葉で、長年一緒にいたメンバーにしか言えない言葉だと思った。

「あはは。いやいや、スタジオにいた娘にも“急にあんなこと言うと思わなかった”と言われたけどね。しかも、直前に“僕が居眠りしてるんじゃないか”ってツッコまれたりとか、加藤が“長さんの次は高木だと思ってた”と言って笑いを取ったりとか、絶妙なやりとりがあったあとだったからね(笑)。

荒井(注)さん、長さん、志村、仲本のほかにも、いろいろな人を見送ってきたけど、“全員、死にたくて死んだわけじゃない、何か原因があって死んじゃうんだ”。そんなことはずっと考えてますね。そういえば、長さんのときも死に目に会っていないんだよね。イベント出演中で、知らなかったんです」

いかりや長介が亡くなったとき、高木はイベント出演のため四国にいた。マネージャーには伝わってきたが、ライブ前の高木に気を使い、終了までは伏せられていたという。

「本当は聞いたあとにライブのエンディングに出ないといけなかったんだけど、ほかの出演者の方に相談して、“もちろん、行ってください”と言われて、すぐ駆けつけました。死に顔は見られたけど、僕もそうだし、ドリフのメンバーの誰も、長さんの死に目には会えなかったんじゃないかな? やっぱり当時はガックリきましたよ」

いかりや長介への信頼と愛情

ドリフターズのリーダーであるいかりやは、メンバーにもスタッフにも、笑いのために厳しく接していたことがよく語られるが、高木にだけは弱音や愚痴をこぼしていたという。

「年齢が近かったのもあったし、当時、長さんと僕以外はみんな独身だったんで『全員集合』が終わったらどっかにいなくなっちゃうの。だから、一緒に飲みに行くって言うと僕しかいない。まあ、僕にはいろいろ愚痴ってましたよ(笑)」

高木から見て、いかりや長介はどういう人間だったのだろうか。

「しっかりした方ですよ、全員集合を見てもらえたらわかるけど、一人で全部仕切んなきゃいけないでしょ? 加藤はよく笑い話で“長さんは物忘れが多い”と言ってたけど、始めから終わりまで全部を把握してなきゃいけない。だから、本番でもしょっちゅう間違えていたけど、あれはもうしょうがないですよ。

あとね、ドリフって対外的な付き合いのうまい人がいないんですよ、みんな基本は口下手だから。問題が起きたときや交渉事は長さんに任せてたから、亡くなったときは枕元で“これからどうすんだよ……”と言った記憶がありますね」

話を聞いていると、いかりや長介という人物への信頼と愛情が伝わってくる。

「だからね、ドリフのみんなは仕事では一人前だけど、どこかで長さんがいたからだよな、と思うところはありますよね。長さんがいて、ほかのメンバーがいる。この絵もそうだけど、こうやって、加トちゃん、志村の変なおじさん、このキャラたちが一堂に会したことってないけど、描きたくなったの。

それは、僕、加藤、仲本、志村が、いかに長さんを信頼していたかを表現したかったから。あと、この本にも載ってる「威勢の良い銭湯」のコントなんか、僕は大好きでね、だから描いたの」

▲何十年も前のコントでも高木の記憶は鮮明だった

この画集には、生き生きとしたドリフターズのメンバーが色彩豊かに描かれている。

「描くのが好きですからね。そういえば、さっき競馬の話になったけど、ドリフのメンバーは競馬でいろいろあったから…(笑)。そのときの三人ドリフも描いてますよ。あのとき、すごく数字が良かったんだよね、ふふふ」