カレー探検家・いよちゃん。全身黄色のつなぎを着て、カレーへの愛を饒舌に語る23歳。彼女はトレードマークのつなぎを着てどこへでも行く。カレーイベントのMCをしたかと思えば、インド料理店の賄いを食べたくてお店のお手伝いもする。驚くことに、この格好で電車にも乗るし、インドにも行く。

カレー大好き家族に育った彼女は、もともとの知的好奇心の強さも相まって、中学・高校と順調にカレーへの興味を深めていく。そして、早稲田大学への入学とともに、その思いは爆発。カレーサークルでの活動やカレー料理店でのアルバイトに精を出し、ひたすら「カレー色の青春」を過ごす。

そして、彼女は2021年の大学在学中に「カレー探検家」と名乗り始めた。果たしてカレー探検家・いよちゃんとは何者なのか。そして、現在23歳の彼女が目指すべき「カレー道」とは? 読んだらきっとカレーが食べたくなること間違いなしのインタビュー。

▲Fun Work ~好きなことを仕事に~ <カレー探検家・いよちゃん>

カレー好き家族で育ち、カレーを好きになる運命だった

――まずはカレーとの出会いから教えてください。

いよちゃん 今、社会人2年目なんですが、カレーにまつわる発信を始めたのは大学1年生のときからなので、活動は5年以上になります。カレーが好きになる大きなきっかけというのはなかったんです。でも、逆に言うと“私はカレーを好きになる運命だったんだ”と感じています。

思い返すと、うちの父が大のカレー好きで、毎週土曜日は父がカレーを寸胴鍋いっぱいに作ってくれて。家族みんなで、まずは普通にごはんと一緒に食べて、お代わりでもう一皿食べて、合間にルーだけ食べて、締めにもう一度ルーだけ食べて……みたいな。それが我が家の週末の楽しみで、そんなカレー家族で育ちました。

――お父さんのカレーは、どんなカレーでしたか?

いよちゃん ルーを使った、いわゆる日本風のカレーです。でも、いろいろと試していたみたいで、コーヒー入れてみたり、ほかの隠し味を入れたりしてました。ある日、父が粒々のタネを持ってきて。当時私は小3~4ぐらいだったんですが、父が「これはインドで食べられているスパイスだぞ」と。それが、私のスパイスとの初めての出会いでした。

その粒々はクミンシードだったんですけど、フライパンに油をしいて、そこにクミンシードを入れるとパチパチパチという音とともに、香りがぶわーーっと広がるのを鮮明に覚えていて。そこから玉ねぎを炒めてルーを入れたんですが、クミンシードを入れただけで、いつもと香りが全然違うと感動して、初めて「私も料理を作ってみたい!」と思ったほどでした。

▲父と出かけた先で毎回食べていたカツカレー

そのあとも、父にカレーが好きだと言い続けていたら、中学生のときに「インド人がやっているカレー屋さんに行こう」と連れて行ってくれたんです。大きなモチモチのナンと、食べたときにお腹からせり上がってくるような熱い香りのするカレーを食べて、また感動して。「ハッ! これまでに食べたカレーとは違う! 知らないカレーだけどおいしい!」と。カレーのことはよく知っているつもりだったので、すごい衝撃でした。

ナンもそのときに初めて食べたわけではないんです。小学校の給食でも出たし、スーパーで売られている市販のナンも食べたことはあったのですが、タンドール窯で焼いたナンは食感といい、香りといい、全然違うんですよね。それで、高校生の頃のカレーの食べ歩きは、ナンを中心にお店を選ぶほどでした。

――転機となったのは、大学入学と聞きました。

いよちゃん そうですね。好奇心が強いのもあって、いろんなことを知るのが好きで、勉強も嫌いではなくて。高校は進学校に進んだんですが、好きなことを知りたくて勉強をするというより、大学に受かるため、将来の仕事のためという目的で勉強をするような環境でした。

たしかに勉強するのは楽しいけれど、その頃は自分の中で「学ぶとは何か。自分にとって好きなことは何か」を問い続けていた気がします。とは言え、まだ高校生なので自分の人生経験が足らな過ぎて、堂々巡りで悩み続けてました。

そんなときに高校の図書室で京大カレー部の本を見つけて。歴史があり、みんなでカレーの研究をしたり、イチからカレーを作ろうと農作物を取りに行くところから始めていたり。カレーを主軸にしつつ、さまざまな活動をしているのを知って、“私もこんなふうにカレー色の青春を送りたい”と思い、大学に行ったら絶対にカレーサークルに入ろうと決めました。

その頃には食文化について深く学びたいと思っていたので、文化人類学を専攻しようと早稲田大学に入ることは決めてました。そのうえで、“早稲田にカレーサークルはないのかな?”と調べたら、「早稲田インドカレーサークルchai」があったので目的もハッキリしてきて、あとはちゃんと大学に入れるように頑張るだけ。無事に合格できて大学に入学した瞬間、新入生歓迎会の参加メールを送って、カレー色の青春の幕が切られた感じでした。