濃密な2年間を経て気づいたカレーとの向き合い方

――2020年にコロナ禍が到来しましたが、活動に影響はありましたか?

いよちゃん 大学に入学して2年間はカレーサークル、カレー店でのアルバイト、間借りカレー出店のほかにも、早稲田祭では800食のカレーを売ることができて、あの2年間はカオス状態だったと思います。

ただ、お客さんに提供する間借りカレーをやりながらも、モヤモヤとしたものを感じ始めたのが2020年ごろ。毎週仕込みをしてカレーを作って、お店に立っても「なんのためにカレーを作っているんだっけ?」と、時々思うことがあって。なんというかクリエイティブではなく、“作らなきゃ”という思いだけで作っていた気がして……。

▲トレードマークの黄色いつなぎ

ほかの美味しいカレー屋さんも食べ歩いていたので、それらと比べて実力も経験も全然足らないことも実感していました。私が本当にしたいことはなんだろう。私にとってのカレーとの向き合い方はどういう形なんだろう。ほかの方法もあるんじゃないか……と。

そして、一度このタイミングで間借りカレーを休もうと決めて、日本全国の旅に出ました。いろんなものを食べて、いろんな人と話して“自分はカレーで何ができるんだろう”を見つめ直す。自分の特性はなんだろうと改めて考えたら「明るいキャラクターを活かして、いろんなことをわかりやすく伝えられるところを自分の武器にしよう」と思い始めました。

それと同時に、伝える側に立つならば、自分自身が“もっとカレーを知りたい”と思い始めて。ちょうど同じ頃(2020年秋)に「東京マサラ部室」というカレーのシェアハウスができたんです。SNSで出会った「カレー哲学たん」を中心に、毎月テーマを決めてカレーの研究が行われるシェアハウスで、朝昼晩、シェアハウスのメンバーが作るカレーしか出てこないんです。

日本全国の旅を終えた頃に「ちょうどシェアハウスができたから、いよちゃんも遊びにこない?」と誘われて、そこで生活を始めることになりました。誰かに出すためのカレーではなく、自分が楽しいから作るという姿を見て「あ、やっぱりカレー作りって楽しいんだ!」と再確認もできて。カレーを出すのもいいけれど、カレーを知るところから始めようと、方向転換したのがこの頃でした。

▲旧マサラ部室のマサラ図書館。カレーにまつわる本が多数並ぶ

――カレーを軸にしたシェアハウスって、楽しそうですね。

いよちゃん そのシェアハウスは小道の奥にあったんですけど、小道を入ったあたりでスパイスの香りが漂ってくるんです。キッチンの換気扇とお風呂場の換気扇がつながっていて、誰かが調理しているときにお風呂に入ると「あ! マスタードシードの弾ける匂いがする!」と漂ってきて楽しい反面、お風呂に入ってもカレーの匂いがついちゃって洗った意味がなくなる(笑)。1年ほどの時間でしたが、本当に勉強になったし、楽しい生活でした。

▲旧マサラ部室でのご飯の様子