「こうだ!」言い切るのが苦手な人はつい、自分を守るために遠回しでわかりにくい文章を書いてしまい、余計なトラブルを招いたりすることも……。簡潔にわかりやすく、相手に好印象を与えるにはどうしたら良いのか――? 日本語の専門家としてベストセラーを連発する山口謠司氏が解決法を伝授する。

※本記事は、山口謠司:著『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

「YES」なのか「NO」なのかをハッキリする

日本人は、断定する表現を避ける傾向にあります。100%正しいかどうかわからないことは、「こうだ!」と言い切ることをあまりしません。

文章を短く、わかりやすくしたい場合は、遠回しな表現を避けることで、文章をスリムにすることができます。

海外の企業や人からよく言われるのが、日本人は真意がくみ取りにくいということです。YESなのかNOなのか、判断できないというのです。

逆に日本人は、NOのつもりで話したのに、話がYESで勝手に進んでいたと困惑することがあります。

「YES」なのか「NO」なのかをハッキリする イメージ:PIXTA

文章では、婉曲な表現は削除してしまっても問題ありません。自信がないからなんとなく付け加えてしまった、ということが多いのです。

すぐに見つけられる婉曲な表現はたくさんあります。

「〇〇かもしれない」
「〇〇と言われている」
「〇〇だろう」
「〇〇のようだ」
「〇〇らしい」
「〇〇と考えられる」

……などです。探せばもっとあります。これらは、言い切ってしまえばカットできます。

「スマホに読書の時間を奪われている、と世論調査も結論を導いたようですし、本を読まない人たちの中には時間がなくてという声も少なくありません。」
 ↓
「スマホに読書の時間を奪われている、と世論調査も結論を導きました。本を読まない人たちの中には時間がないという声もあります。」

このように婉曲表現を削除したり、句点で文章を短くすることができます。

言い切る自信がないときは、つい使ってしまうのが婉曲表現です。気持ちは私もわかります。しかし、文章を短く、わかりやすくしなければならない場合は、思い切って削除してしまいましょう。

「察してほしい…」だと文章は長くなる

婉曲に似た表現に、逃げの表現があります。要点をわかりにくくすることで、強い表現になることを避けているのです。

上から目線だと相手に感じさせないため。傷つけないため。他者を慮る日本人らしい、いい表現でもあります。

しかし、ビジネスの世界では、要点をぼかすと後々トラブルになる可能性もあります。「どう動いてほしいのか」を、明確に伝えるべきです。

察してほしい、という思いで書く文章は、長くなりがちです。

「明後日の納品になると、発売予定日に間に合わない可能性があります。」
 ↓
「発売日をずらさないため、明日までに納品をお願いします。」

「可能性があります」という「察してくださいというメッセージ」の含まれた表現を変えることで、このように文章がスッキリします。

「明日までに納品」という要点から逃げないことで、文章が短くなるのです。