東京進出は避けては通れへんなと思った

――30年いろいろあったと思うのですが、ぜひお聞きしたいことがあります。お二人は1993年に大阪でデビューされて2001年に東京に進出されましたが、なぜそのタイミングで東京に来ようと思ったのでしょうか?

多田 2001年にルミネtheよしもとができたんですよ。僕らは大阪時代に、大阪の番組に出してもらいつつ、『ジャングルTV~タモリの法則~』にちょこっと出してもらったりとか、『ナイナイサイズ』の前説に大阪からわざわざ行かせてもらったりしてたんです。それはナインティナインさんの当時プロデューサーをしていた吉本の社員さんが、僕らのことを買ってくれてて、ちょこちょこ東京に呼んでもらってたんです。

そんなときにルミネtheよしもとができるってことになって、お世話になってる社員さんがルミネの支配人になられたんです。で、その社員さんが「お前ら東京来るなら今やぞ」って背中を押してもらったんですよね。なので、そのタイミングで東京に行かせてもらいました。

――東京進出についてはコンビで意見が分かれたりはしなかったんでしょうか? 大阪でも仕事がある状態だったと思いますが。

善し その頃、大阪でやってた芸人は「いずれ東京に行くんだろうな」という気持ちは心の隅に持ってたと思うんですよね。大阪でやらせてもらえてるということも、もちろんありがたかったんですけど、ちょこちょこ東京でお仕事させていただく機会が増えていくなかで、“東京に行かな話になれへんな”と思ってたんですね。東京に行かずに大阪でずっとやるという方向もあるとは思うんですけど、やっぱり『笑っていいとも!』に出たいって。

――なるほど(笑)。時代ですね。

善し やっぱり憧れるじゃないですか。いいともはデカかったですね。それだったら新宿の近くにいないとね(笑)。大阪から呼んでもらうのはなかなか難しいと思ったんですよ。僕らがまだ大阪にいるときに、ガレッジセールがいいともレギュラーになって。

多田 ガレッジセールな。ちょうど同世代やもんな。

善し そのときに“東京にいないと出れへんのとちゃうかな”と思いましたね。

――東京の同世代の芸人は、そこまで行ってるんだという。

善し そうですね。ロンドンブーツ1号2号も同世代で、オーディションとか一緒に受けてたんですけど、テレビで大活躍していて、“東京は避けて通れへんな”って。

今までやってきたことが2012年に一気に爆発した

――30年間で一番印象に残っている出来事ってなんですか?

善し 一番大きく動いたのが、2012年だったと思うんですね。僕らのターニングポイントというか。

多田 そうですね。

善し それは相方の『R-1』優勝と、その年に「あたりまえ体操」が認知されて、いろんな番組に呼んでもらえるようになったこと。

多田 感覚としては、今までやってきたことが2012年に一気に花が開いたって感じです。

――用意していたことや準備してきたことが実を結んだんですね。

多田 僕がR-1で優勝したネタはギャグだったんですけど、そのギャグも大阪時代からイベントがあるたびに4~5個ずつちょこちょこ作ってきたものが、15年の時を経てあのR-1で花開いたという感じでしたね。当時は「ギャグなんかで優勝?」っていう声もあったんですけど、僕としては“裏では15年もかけてきてんけどな……”って(笑)。

――昨日今日の話じゃないですもんね。

多田 それはわかってほしいなっていう思いはありました。でも、それを「15年もやってきたんやぞ!」って自分から言うのもあれなんで言わなかったですけど(笑)。僕がR-1優勝するよりも前に相方は4年連続で決勝まで行っていて。最終的に僕が優勝したので、コンビとしてはいいバランスでR-1を終われたと思ってたんですけど、あの年ってスギちゃんも一緒だったんですよ。

――ああ、そうでしたね。

多田 スギちゃんが準優勝だったんです。で、スギちゃんがそれで大ブレイクして。世間からは「優勝した僕よりも、準優勝のスギちゃんのほうがブレイクしてる」って言われるようになって落ち込んでたんです。そのタイミングで、あたりまえ体操がメディアですごい取り上げてもらえるようになって。本当に救われましたね。

――同じ年っていうのが奇跡ですね。あたりまえ体操は今でも子どもが口ずさんだり、昨年の交通安全週間で使用されたり、スタンダードなものになった感じがします。

多田 もう11年も経ってるのに、いまだにそうやって言っていただけるのは本当にありがたいですね。

――COWCOWさんって漫才もできるし、コントもできるし、それぞれピンネタもできる。とても特異なコンビだなって思うんですけど、後輩で自分たちと同じ匂いがするというか、シンパシーを感じる芸人っていますか?

多田 今ってもう、スーパー後輩芸人たちがたくさん出てきてるんですよ。もはや「僕らに似てるな」って言うのもおこがましいような存在だと感じてます。昔はR-1の決勝に二人とも行ってるコンビなんていなかったので胸を張れたんですけど、今はチョコレートプラネットや霜降り明星、そういうコンビも出てきてますし。

さらにR-1とM-1を両方とも制した、粗品や野田クリスタルのような芸人もいますし。なので、昔とは勝手が違いますね(笑)。だから、後輩たちは「似てるな」とかではなく、素直に「すごいな」って尊敬してます。“俺らも負けじと頑張らなあかんな”という気持ちです。

▲後輩に対するリスペクトを口にしたCOWCOW