しんどい道を選ぶことが人生での正解
自らの原点でもある「ストロングスタイル」を現在も標榜し、さらにカール・ゴッチ、藤原喜明から受け継いだプロレススキルも披露する。派手なコスチュームが飛び交う現代のリング上において、鈴木が身につけるのは黒タイツとレスリングシューズのみだ。タオルを被っての入場時には、世界中のプロレスファンが「風になれ」と声を一つにする。
その一方で、観客のいない東京ドームのスタンドや新幹線の中でも対戦相手と相まみえるという、奇想天外な戦いもいとわない。30歳手前にして訪れた、選手生命の危機という土壇場を踏み止まったことにより、見出すことができた新たな世界。「デビューしてからずっと、自由に生きたいと思っている」と語る言葉の通り、まさに今、自由なプロレス人生を歩み続けているのではないだろうか。
今後の夢、実現させたいことを聞いてみた。ここでも素直な気持ちを言葉にしている。
「先のことは決めてるよ。決めてるけど、その都度変わりますから。変わるし、変わらないこともある。40年前から変わらない自分の夢もある。……絶対に言わねえよ!」
こちらの思いを先回りして、言わないと断言されてしまったが、このほかにも「座右の銘はない。人の言葉でいいと思うものもない」と語る鈴木だが、今回のインタビューでは自らの人生における信念を語っている。
「人生の分かれ道で、自分で道を選ぶじゃないですか。しばらくその道を行って、良いことが続いたり、楽に前を進めたら、失敗だと思うようにしてるかな。“間違えた!”と。
だから、すげぇしんどいこととか、イヤなことばっかりあるほうを選んだときに“俺は間違ってない”と思うようにしてる。そんなことの繰り返しで今まで来てる。よくあるじゃないですか、“これが正解”とか“こっちを選んだら楽だよ”とか“これ近道なんで”とか、そんなつまんない人生ねえよ」
その考え方に対し、多くの人々はそういう楽な方向に向かっているのでは? そう、言葉を向けてみた。
「いいんじゃないですか? 世の中、バカしかいないんで。だから、俺だけが得していると思っていますよ」
タイパ、コスパという言葉が定着してしまい、それをうまく使いこなすことこそが頭のいい生き方として持て囃される現代において、鈴木の言葉は力強く響いた。インタビューでは、自分は自分、他人は他人、と繰り返し話していた鈴木みのる。この無頼さに自分のようなプロレス好きは魅了されてきたし、これからもされていくんだろうなと思わされた。