思い出に残っているのは負けた試合(笑)
――先ほども選手の話になりましたが、当時好きだった選手はいますか?
辻 やっぱり、桧山さんですかね。男前やし、カッコよかった。ホームランも打ってたし、新庄さんも好きやったんですけど、なんか桧山さんのほうが硬派な感じがあって。めっちゃ深くヘルメットをかぶるイメージです。
※この取材後、ニッポンの社長は「虎-1グランプリ」の優勝特典として、9月26日の試合前にファーストピッチセレモニーを務め、辻の好きだった桧山進次郎さんと1打席対決。かつてタイガースでクローザーを務めたラファエル・ドリス投手を彷彿とさせる投球フォームで、見事3塁側へのファウルに抑えた。
――わかります(笑)。さっきの関川・久慈⇔大豊・矢野のトレードも、最初は桧山⇔中村武志だったとか。
辻 へえー! そうなんすか。
――それが桧山は出せない! と土壇場でなって、結局このトレードになったらしいですけど、そうなってなかったら矢野さんはタイガースに来てなかっただろうなって。
辻 いや、ホンマすね。
――長年のタイガースファンとして、思い出に残ってる試合を教えてください。
辻 思い出……うーん……もう絶対勝ったやろ、と思ってたら、広島市民球場で緒方孝市選手に、あと一人から逆転満塁サヨナラホームラン打たれて負けた試合※ですかね……負けた試合なんかい!って話ですけど。
※1997年に対広島25回戦(広島市民)で、9回3点リード二死満塁から葛西稔が緒方孝市にサヨナラ本塁打を浴びる、3点差からの逆転満塁サヨナラ弾は史上8度目で、二死からは史上3度目。
――ありましたね(笑)。
辻 あれは初めての衝撃というか、こんなこと起こんねや……ってショックがデカかったですね。こっから負けんねや! ウソやろ?っていう(笑)。テレビの前で呆然としました。で、逆に勝った試合でいうと、石井一久さんからマーク・ジョンソンがスリーラン打った試合※。ほんまに興奮しました。
※1999年のヤクルト16回戦(甲子園)で9回裏に4点リードされていて、無死満塁から新庄剛志の2点適時打のあと、一死二、三塁からマーク・ジョンソンが高木晃次から本塁打を放ち、逆転サヨナラ勝ちで代打サヨナラ弾は球団史上15人目、9回裏4点差以上のビハインドから逆転サヨナラ勝ちは球団史上初。
――野村監督の1年目ですね。
辻 見に行った試合はことごとく負けてるんですよね。京都なんで、西京極で試合があると見に行ってたんですけど、勝った記憶がない。
――弱かったですしね。
辻 かといって、甲子園では勝ってたかっていうと、甲子園も勝った覚えないですね(笑)。覚えてるのは、巨人戦で松井さんの弾丸ライナーでのホームランを目撃したんですけど、“打球速度、早っ”と思ってたら、あとあと聞くところによると、プロ野球史上一番滞空時間の短いホームランやったらしくて。そりゃそうやわって。
今年は阪神であって阪神じゃない
――辻さんが阪神について書いた記事で「いくら強くなっても、弱い頃を知ってると、足元がおぼつかない」って書かれてて、すごく気持ちがわかるなぁと思ったんです。
辻 だから今、僕、ちょっとそう思ってるんです。“今の阪神は、阪神であって阪神じゃない”って気持ち。
――わかります。
辻 弱いときはめっちゃ阪神なんですよ。だから去年の開幕直後※とか、めっちゃ阪神やなあって。
※2022年、タイガースは開幕から9連敗のセ・リーグワースト記録を更新。しかも開幕戦は8-1から7点差を逆転された。
――(笑)。去年の開幕はだいぶ辻さんのツイートに救われました。※
※昨年、辻は9連敗中に「敗因は僕です」と書いたツイートを投稿し続けた。
阪神が開幕9連敗しました。
— ニッポンの社長 辻 (@tsujiclassic) April 3, 2022
敗因は僕です。
5年ほど前、初めて営業の仕事にいかせていただいたのですが、ミキと2組で30分の持ち時間にもかかわらず、僕らはスベりすぎて7分で帰ってしまい、ミキに23分間も漫才させてしまいました。申し訳ございません。二度とこういった事がないよう気を引き締めます。
辻 勝手にやってたんで(笑)。でもやっぱ僕らみたいな、弱かった頃を知るタイガースファンしかわからへん気持ちってあると思うんですよ。そりゃ周りは言うんですよ、「開幕負けただけやん」とか「いつか勝つって」みたいに。ちゃうねん、基本、無理やねん。
――無理って(笑)。
辻 そう、基本無理(笑)。僕らは開幕したから注目してるんやなくて、開幕を楽しみに待って、で、この負け方やねん。開幕だけのショックやないんですよ。「ここまで楽しみにしてたの、いったい何やってん」みたいなショックなんですよ。これ、偏見かもしんないですけど、この気持ちわかってくれるの、タイガースファンだけですよ。