現在のパレスチナと今後の懸念点
イスラエルが占領するパレスチナの地域では、ユダヤ人の入植地建設が進み、パレスチナ人の生活はますます制限されています。1948年の第一次中東戦争で生じたパレスチナ難民は、現在その子孫を含めて500万人以上に達しており、難民キャンプでの生活を強いられるなど、多くのパレスチナ人が過酷な状況下に置かれています。
ヨルダン川西岸地区は、1967年の第三次中東戦争でイスラエルに占領されて以来、イスラエルの実効支配が続いています。一部地域はパレスチナ自治政府(ファタハ)の管轄ですが、現在もイスラエル軍による軍事支配が及んでいる状態です。イスラエルは国際法違反とされるユダヤ人の入植地建設を継続しています。
一方のガザ地区においては、2005年にイスラエル軍は撤退しており、現在は武装勢力のハマスが実効支配しています。しかしイスラエルとの境界線には壁が設置され、パレスチナ人の生活と移動は制限されています。そのため「空の見える監獄」とも呼ばれ、200万人に及ぶパレスチナ人が不自由な生活を送っているのが現状です。
今回イスラエルに侵入して奇襲攻撃を実行したのは、ガザ地区を拠点にしている武装組織ハマスです。そのためイスラエル軍はガザ地区への地上侵攻を計画し、ハマスの殲滅を掲げているのです。
歴史をたどっていくと、イスラエルとパレスチナの関係は極めて複雑で、一筋縄では解決できない問題であることがよくわかります。両者は度重なる武力衝突が起こし、多くの悲劇が繰り返されてきました。
長年にわたる対立の結果、両者のあいだには深い敵対意識と疎外感が横たわっており、容易に和解できる状況にはありません。宗教やナショナリズムも絡み合っていることが、問題解決をより困難にしています。
アメリカはこれまで、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ウクライナに多額の援助をしてきました。イスラエル軍がガザ地区への地上侵攻を開始したことで、その影響は中東全体に及ぶ可能性があります。中東全体を巻き込む戦争に発展した場合、イスラエルを支援しているアメリカはウクライナとイスラエル双方の対応をしなければならず、アメリカの負担は大きくなるでしょう。北朝鮮や中国の動向によっては、現在の中東情勢が日本にも波及する可能性もあるのです。