来季こそコールのワールドシリーズでの登板が見たい!
では、もう一段階深堀りをしていくと、この長打抑制の主因はどこだったのでしょうか。続いて実際の投球を見ていきましょう。
Gerrit Cole's 7 Consecutive Outs by Strikeouts. pic.twitter.com/E7oydI41LI
— Rob Friedman (@PitchingNinja) July 16, 2023
最速101mph(162km/h)の爆速ストレート、スライダー、ナックルカーブ、チェンジアップ、カットボールの5球種を巧みに扱い、動画のとおり各球種ともにキレが凄まじい限り。芳しくない昨季も含め、ここまで球の質が問われることはありませんでした。
ただ、ストレートのみに焦点をあてると、今季ストレートの平均球速は1mph程度減少(2022年平均97.8mph、23年平均96.7mph)をしており、球速のみで判断をした場合は質が落ちているとすら言えてしまいます。
しかし、このストレートの球速低下にこそ秘訣がありました。球速を若干犠牲にし、エクステンションを短くした(つまり、従前よりバッターより遠い位置でボールをリリースする)ことでリリースポイント(球を離す位置)を上げ、制球力を上げたと推察できます(その分、三振率も低下していますし、リスクは生じます)。
そして、さらに洗練された制球力でより高いゾーン(コース)にストレートを投げ込むことによって、打者のコンタクトの質を抑制させることに成功しました。昨季は対ストレート被打率が.221、長打率が.420であったのに対し、今季は被打率.201、長打率が.332と大幅改善が見られました。
この改善は変化球にも見られ、長打率改善がそれぞれカーブで.122、チェンジで.075、スライダーで.030、そしてチェンジでは脅威の.188も計測されました。エクステンション短縮・リリースポイント上昇が唯一の変化・調整ではないものの、大きい要因と言えるのではないでしょうか。
野球オタクとして知られるコール選手が、日々どれだけの研究・調整をしているかは有名な話ですが、現役最強のエースとも言える彼が11年目にして悲願のサイ・ヤング賞を手に入れたことは、ヤンキースファンとして大変感慨深いです。コール選手、改めておめでとうございます! こうなると、来季こそはワールドシリーズで圧巻の投球を見たい…!
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今週の記事をもって「KZiilaのニューヨークだより:ヤンキースときどき大谷翔平」は最終回となります。連載は終了となりますが、引き続き定期的にワニブックス・ニュースクランチや、その他媒体において、MLB、ヤンキースや日本人選手の活躍について皆さんにお届けして参ります。
これまでご覧いただきありがとうございました! そして今後とも私KZillaおよびワニブックス・ニュースクランチをどうぞよろしくお願いします。
出典:SI.com掲載記事 (https://www.si.com/mlb/2023/09/07/stats-behind-yankees-gerrit-cole-cy-young-push)