ゲリット・コール投手が悲願のサイ・ヤング賞を受賞!

先日、2023年MLBシーズンの表彰受賞者らが発表されました。

アメリカン・リーグ MVP:大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)
ナショナル・リーグ MVP:ロナルド・アクーニャJr.選手(アトランタ・ブレーブス)
アメリカン・リーグ サイ・ヤング賞:ゲリット・コール選手(ニューヨーク・ヤンキース)

それぞれが満票受賞を果たし、近年稀に見る圧倒的かつ独占的な結果となりました。

大谷選手は言うまでもなく歴史的なシーズンで当然の満票受賞。アクーニャ選手も史上初の40本塁打70盗塁達成という、とんでもない偉業が評価されての満場一致となりましたが、コール選手も(記録更新などはしてないものの)支配的な成績を残しました。

▲ゲリット・コール選手2023年成績

ご覧の表のとおり、投球回数、防御率、WHIP(1イニングあたり何人の走者を出したかを示す投手の成績評価項目)でアメリカン・リーグ1位、奪三振数で2位、その他の指標もほぼトップ10級と文句なしの数字。

特に選手の総合貢献度を表すWARでは、rWAR(Baseball Reference社計算)ベースで(野手を含めた)リーグ2位となる7.4勝を計上し、ずば抜けた成績を残した大谷選手(rWAR 10.0勝)を除いた、すべての選手を上回っていました(大谷選手は2位と2.6勝差もつけており、あらためて異次元の成績とわかります……)。

fWAR(同Fangraphs社)でもリーグ9位、投手内では3位の5.2勝を計上しました。コール選手を上回ったケビン・ゴーズマン選手(トロント・ブルージェイズ)、ソニー・グレイ選手(ミネソタ・ツインズ)らは5.3勝の計上となりましたが、これはほぼ誤差の範囲内にあり、彼がリーグトップ級であったことは間違いないでしょう。

ちなみに大谷選手のfWARは、2位のマーカス・セミエン選手(テキサス・レンジャーズ)を2.7勝も上回る9.0勝とされており、どちらのWARベースでもかなりの差で周りの選手たちを圧倒していたことが明白です。

コール投手の再ブレークは「被・HRの減少」にあり!

さて、順番が前後してしまいましたが、ここでゲリット・コール選手を改めて紹介をさせていただきます。

コール選手は、2011年ドラフトの総合1位指名でピッツバーグ・パイレーツに入団。2013年に順調にメジャー・デビューを果たすと、2015年には208回投げて防御率2.60、202奪三振、WHIP 1.09、4.3 rWAR / 5.1 fWARで大ブレイクし、サイ・ヤング賞4位入賞を達成しました。

しかし、球界を代表するエース格のコール選手が誕生したのは2018年のこと。シーズン前にヒューストン・アストロズへトレード移籍をすると奪三振量産機へと化し、2シーズン通して412.2回で脅威の602三振を奪いました。

そして、その開花が評価され、2020年シーズン前にヤンキースと9年3億2,400万ドル(≒当時のレートで約350億円)の超巨大契約を締結し、ニューヨークのエースに就任をしました。幼少期からヤンキースファンであったコール選手にとっては、夢が叶った瞬間と称しています。

そんな彼のアストロズ&ヤンキース時代の成績を見てみましょう。

▲ゲリット・コール選手2018-23成績推移

当該期間中のベスト記録を表す緑表記が多い2019年シーズンが示すとおり、ここが第二のピークでした(最初のピークは前述のブレークした2015年シーズン)。しかしヤンキース加入後は、決して悪い成績ではないものの、圧倒的とまでは言えない投球が続いていました。

特に2022年は200.2回を投げることができたものの、(当該期間中のワースト記録を表す赤表記が多いとおり)成績は軒並み落ちてしまい、悔しいシーズンとなってしまいました。

そこから一転して今年は第三のピークを迎えます。rWARベースではキャリア史上最高のシーズンを過ごし、(実は)悲願のサイ・ヤング賞初受賞を果たしましたが、その成功の秘訣はなんだったのでしょうか。端的に言うと「長打、特にホームランを減らした」ことです。

上記図の右端にある「HR/9回」の推移に注目ください。2022年には9回ごとに1.5本のホームランを献上していたのが、23年にはたった0.9本、実数で言うと33本から20本へ激減しました。

そして2022年の被安打率は.209、23年の被安打率は.206、と.003のみの差ながら、長打率では22年.390から23年.322、と.068も減らすことに成功しました。

打者で置き換えてみましょう。今季の打率.274/長打率.437を残したアレック・ボーム選手(フィラデルフィア・フィリーズ)と、打率.271/長打率.500を残したラファエル・デバース(ボストン・レッドソックス)選手の長打率差.063。ホームラン13本+二塁打3本分の差となるわけで、実数でこれだけの被HR・長打を減らしたわけです(ちなみにボーム選手は31二塁打+20ホームラン、デバーズ選手は34二塁打+33ホームラン)。