MLB史上初となる「投手の10年超契約」は実現寸前!?
そして、いずれの契約にも言えることは、契約年数・契約総額では当該選手の市場価値を上回るものであった一方、年俸ベースではそれぞれ想定年俸を大きく下回っている点です。
MLB球団が常に意識する必要がある贅沢税ライン(簡潔にまとめると、チームの総年俸が一定金額を超えた場合にペナルティが課される制度にある閾値)の運用上、年俸を抑えるとインセンティブがあり、これを契約年数や契約総額を増やすことで抑制をしてきたのが、この契約超長期化トレンドです。
山本選手の場合、契約(ポスティング)の札入れが前述の予想9年2億2,500万ドルを超えてきた際には、一転して契約年数と総額を肥大化させ、1年あたりの年俸を抑えてくるチームが出てくるのではと考えます。それもまた25歳という若さが、さらに追い風となっている理由とも言えるでしょう。
例えば年俸を「2,500万ドル×10年=総額2億5,000万ドル」にするのではなく、「2,000万ドル×14年=総額14年2億8,000万ドル」にする。このような規模感まで契約年数を伸ばせば、1年あたりの年俸は2,000万ドルまで抑制が可能となります。
この場合、山本選手は契約11年目以降、つまり35歳以降に稼ぐポテンシャルを返上するのと引き換えに、より長期にわたる契約を手に入れることができます。そして球団側は、MLBで実績のない選手に30代後半の4年+数千万ドル多くコミットをする代わりに、贅沢税の運用上有利になる、というバランスの取れた妥協といえるでしょう。
また山本選手が契約額を遥かに超える活躍を見せたり、何かしらの理由で契約チームとお別れをしたくなった場合に備えてオプトアウト(契約破棄)条項を含めると、より旨みが増すかもしれません。(※前例として、現東北楽天イーグルスの田中将大選手が2013年オフにヤンキースと7年1億5,500万ドルの契約をした際にも、4年目終了時に当該条項が組み込まれておりました。なお、田中選手は条項を行使せず残留しております)
超長期契約の可能性を模索しましたが、やはりいくら25歳の逸材とはいえ、MLBにて一球も投げていない選手に対して10年超の契約はリスクが高すぎる、と考えるチームが大半かもしれません。それでも山本選手に惚れ込んでいるチームが大胆に出てくると信じるとします。どのようになるにしても、山本選手がとてつもない契約を手に海を渡ることは確実と言えるでしょう。