トランプが言い続ける「Unfair」な日本

アメリカ人は、人助けをしただけで満足します。助けた相手から期待するのは感謝だけです。しかし、感謝もされずに、善意を利用されて不利な状況にもっていかれた場合、アメリカ人はそれを許しません。まさに「Unfair」だからです。

▲アメリカ人はunfairを許さない イメージ:PIXTA

2016年の大統領選挙期間中、トランプ氏はしきりにグローバリゼーションを批判し、否定し続けました。アメリカが常に不利な状況に置かれ、国力が低下しているのはグローバリゼーションの結果だと論じました。

その具体例として、北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)があります。1994年の協定発効当時は、 この協定はメキシコにとって有利なものでした。環境規制は緩く、賃金が安いメキシコで製造された製品は大した関税もかけられずにアメリカ市場に入ってきました。メキシコの経済発展の手助けとして、メキシコに対するアメリカ製品輸出には高い関税がかけられました。

協定には目的がありました。その一つが、メキシコとの経済格差を是正し、メキシコを発展させ、不法移民問題を解決するということです。しかし、今やすでにメキシコの経済は大きく発展しています。トランプ氏は、このような不平等な協定が今もまだ残っていることを「Unfair」だと言ったのです。

トランプ氏は当選後、NAFTAを破棄して、新たな協定を提案しました。激しい交渉の末、間もなくアメリカの議会がこれを承認する見通しです。民主党・共和党も賛成していますし、カナダとメキシコはすでに承認しています。

▲1992年10月の北米自由貿易協定草案確定式 出典:ウィキメディア・コモンズ

トランプ氏は、日本もまた「Unfair」だと考えています。戦後の日本はいわばメキシコと同様の構造にありました。日本の復興は進み、1980年代、さらに「平等」な貿易体制をアメリカが要求し、貿易の障壁は部分的に修正されていきました。しかし、日本とアメリカの貿易の不均衡はいまだに続いています。

トランプ氏が現在も、日本は「Unfair」だ、と言い続けているのはこれが理由です。評価として正しいのかどうかは別にして、令和元年(2019)7月の参議院選挙の後、現在行われている日米貿易交渉によって、さらに平等な体制が整えられるでしょう。農産物に関しては、トランプ氏が参加を拒否したTPP11(環太平洋パートナーシップに関する抱括的及び先進的な協定)と同じ条件になるだろうと言われています。

日米関係の土台となったトランプタワーでの会談

2019年5月、私は安倍晋三首相と対談しました。日米貿易について、安部首相は次のように説明してくれました。

「たしかにモノの輸出入では日本が有利だが、サービス部門ではアメリカが有利であり、合算するとおおむねバランスがとれている」

そのことを一生懸命トランプ大統領に説明している、とも安部首相は言っていました。

▲貨物船のコンテナボックス運版作業 イメージ:PIXTA

興味深いことに、トランプ氏は選挙中、貿易不均衡に関して、日本と中国をいっしょくたにして、これもアメリカに対して「Unfair」だと主張していたということです。

1980年代の貿易交渉のときのセリフを蘇らせ「日本は何百万台もの自動車をアメリカに輸出している」と批判しました。日本車の大部分は、現在アメリカで製造されていることを知らなかったようです。

トランプ氏が当選してすぐに、安倍首相はニューヨークへ行き、トランプタワーでトランプ氏と会談しました。

私は、この会談が安倍首相とトランプ大統領の信頼関係の土台になったと考えています。それ以来、ことあるごとに、トランプ氏は安倍首相に相談しています。安倍首相はアメリカにとって、アジアにおける唯一信頼できるリーダーだという位置づけになっていたのです。