「NOAHを広めたい」賛否両論のなかでの決断

2023年をGHCヘビー級王者として迎えながら、2月21日の東京ドームで新日本プロレスのIWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカとの一騎打ちに敗れ、3月19日の横浜武道館では全日本プロレスからフリーになったジェイク・リーに敗れてGHCヘビー級のベルトを奪われてしまった清宮海斗。

上半期に大試練に見舞われた清宮。巻き返しに向けて選択したのが、7月15日~8月13日に開催された新日本の真夏の最強決定戦『G1 CLIMAX』だ。

振り返ると、清宮はデビューしてすぐに新日本との戦いを経験している。デビューした2015年12月当時、NOAHマットは鈴木軍に占領された状態で、清宮はデビュー3か月で鈴木軍との戦いに駆り出され、デビュー半年の6月26日金沢で“世界一性格の悪い男”鈴木みのると初遭遇(丸藤正道&矢野通&清宮vs鈴木&飯塚高史&金丸義信の6人タッグマッチ)。弄ばれた挙句に鈴木のゴッチ式パイルドライバーの餌食になった。

また、鈴木軍との戦いを前に、デビューわずか2か月半で新日本のリングにも上がっている。2016年2月25日、新宿FACEにおいて新日本が団体枠を超えた新世代育成プロジェクトとして開催した『LION'S GATE』に出場、田口隆祐の胸を借りたのだ。

必殺技・どどんを食らって6分20秒で敗れたものの、清宮の師匠・小川良成に「しょっぱいんで厳しくやってくれ」と言われていたという田口。清宮について「僕の採点が甘すぎるかもしれませんが、ところどころ粗いところはあるけど、全体としてみれば全然しょっぱいなんて思わない。素晴らしい」と高く評価した。

▲デビュー当時から過酷なカードにも参戦した清宮

そして清宮の初勝利の舞台は、じつはNOAHではなく新日本。同年5月19日新宿FACEの『LION'S GATE』第2弾大会で、川人拓来に逆エビ固めで勝っている。

そうした若手時代の経験を考えると、清宮がG1 CLIMAXを捲土重来の場にしたのも頷ける。今年のG1は強豪32選手がA~Dの4ブロックに分かれ、各ブロックの1位と2位が決勝トーナメントで覇権を争うというもの。

清宮はオカダを撃破してIWGP世界ヘビー級王者になったSANADA、令和闘魂三銃士と名付けられた海野翔太、成田蓮、辻陽太、ヒクレオ、チェーズ・オーエンズ、ゲイブ・キッドがいるAブロックにエントリー。最年長が35歳のSANADAというフレッシュなブロックになった。令和闘魂三銃士はキャリアを考えれば、いずれも清宮の後輩になる。

清宮はG1期間中の大会とNOAH最強決定戦の『N-1 VICTORY』を欠場し、G1に集中することを宣言。当然、賛否両論が起こったが、当時を振り返ってこう言う。

「オカダ選手へのリベンジというのもありましたけど、それよりも清宮海斗とNOAHという団体を広めていくためには、N-1を休んででもG1に出る、外に一度出ることだと。新日本プロレスという舞台で名前を広めたいという気持ちが強かったです」

▲さまざまな意見を受け入れつつ、自身のNOAHへの思いを貫いた

7月15日の札幌での開幕戦で、海外武者修行から帰国してSANADAのIWGP世界ヘビー級王座に挑戦するなど“時の人”になっていた辻陽太に、変型シャイニング・ウィザードで勝利。続く7月18日の山形では、清宮が海外武者修行をしていた2017年8月18日、カナダ・マニトバ州ウィニペグの『エリート8トーナメント』準決勝で敗れているチェーズ・オーエンズに、変型シャイニング・ウィザードで雪辱。7月21日長岡では、1年4ヵ月後輩にあたる海野と20分時間切れ引き分けになった。