武藤敬司の遺伝子を引き継ぐ者同士の戦い

7月25日後楽園ホールでは、IWGP世界ヘビー級王者・SANADAとの注目の公式戦。全日本プロレス出身のSANADAは、武藤敬司の付き人を務めていたことがあり、その遺伝子を受け継いでいるだけに、この一戦はまるで合わせ鏡のような攻防になった。

腕や首、足の取り合いなどのベーシックな攻防は新日本ではなく、かなりNOAH的であり、NOAHのルーツでもある全日本的なものに。何気ないアームドラッグも馬場・全日本からNOAHに引き継がれている、かつてのNWAスタイルだった。

試合時間は残り2秒の19分58秒、SANADAがシャイニング・ウィザードで劇的勝利。印象的だったのは、新日本ファンから清宮にもSANADAに負けない声援が送られたことだ。

「敵地の新日本のG1に出る以上、自分はブーイングがたくさん来ると思っていたので、意外にも歓迎ムードがあって、SANADA戦に限らず、どこの会場でもブーイングよりも応援の声が多くてビックリでしたね。SANADA選手との試合は……戦いなので、こういう言い方は違うのかもしれないですけど、すっごい楽しかったですね。

小川(良成)さんと試合をしているときと何か似ているなっていう感じがして。技術的な話になるんですけど、自分が技をやったら、そこからSANADA選手の技が来て、それがどんどんつながって“こう行ったら、どう返してくるのかな”、“こう来たから、こう返そう”って連鎖していって、そこが楽しかったです」

▲SANADAとの試合でお互い通じ合うものがあったという

一方のSANADAも「すごいよ、改めて。ひとりでこのリングに乗り込んで、ひとりであの若さで、ひとりで戦って本当にカッコよかったよ。やってて楽しかった。また、やろう」と、清宮を評価すると同時に楽しさを口にしていた。

その後、7月27日大田区でゲイブ・キッドと両者リングアウト、8月1日高松で203㎝、120㎏のヒクレオにゴッドセンド(高角度チョークスラム)を食らって敗戦。最終公式戦の8月5日大阪では、成田連にシャイニング・ウィザードをカウンターのフロント・スープレックスに捕らえられて逆転負け。SANADA戦も含めて無得点試合が4つ続いたため、決勝トーナメント進出はならなかった。

だが、清宮本人にとっては未来を見据えるうえで得たものは大きかった。

「辻選手、海野選手、成田選手……純粋に“スゲーな!”って思いましたね。キャリアは僕のほうが上ですけど同世代ですし、この人たちがプロレス界の未来を創っていくと感じました。それぞれみんな違うスタイルのなかで、各々が自信を持って自分のパフォーマンスを見せていて、ものすごいパワーを感じましたね」

G1の公式戦は8月5日のエディオンアリーナ大阪で終了したが、8月13日の両国国技館における最終戦まで出場。その間に新日本のヤングライオン、大岩陵平と4回タッグを組む機会があった。大岩は21年8月にデビューした清宮より2歳下の25歳だ。

「なんで今、新日本が業界のトップにいるんだろうっていうのも考えながら試合をしていて、やっぱり若い選手の勢いとか、自分と同じ世代がメチャクチャ盛り上がっているなっていうのは感じたので、だからこそ、自分は陵平とタッグを組んで試合をしていて、ものすごく未来を感じました、陵平に」

▲同世代との邂逅は清宮にとって大きな刺激となった

そしてG1終了後、清宮はNOAHと新日本の垣根を取っ払ったアクションを起こす――。

『清宮海斗のROAD TO 1.2』は、次回12月22日(金)更新予定です。お楽しみに!!