かつてビジネスホテルといえば、文字どおり出張族の御用達であった。経費に上限があるサラリーパーソンにとって、「どれだけ安いか」が重要なポイントだった。しかし、今やビジホはサラリーマンのみならず、ホカンス利用や家族旅行でも利用しやすい場所に変貌を遂げている。駅からの近さ・清潔感・アメニティ・露天風呂など、いわゆるハイクラスなホテルと比較しても劣らないところまで進化している。

特に最近の客層が重要視しているのが「朝食」というのはご存じだろうか。ビジホに朝食革命を起こしたドーミーイン、全国どこでも無料の東横INN、ご当地グルメにこだわったアートホテル、焼き立てパンとごちそう野菜が人気のインターゲートホテルズ、和洋さまざまなメニューが楽しめるアパホテルなど、各ホテルが激しく鎬を削っている。

今回は、特に朝食で注目を集めている都内近郊の3つのホテルを深堀りした。

「ベジ活」で女性客の心をつかんだスーパーホテル

スーパーホテルといえば「選べるまくら」を思い浮かべる人が多いことだろう。フロントで高さや硬さを自分で選ぶことができるシステムで、その種類は豊富だ。天然温泉を備えたスーパーホテルも増えており、移動の疲れをまくらとともに癒してくれる。一方で定番の宿泊施設ゆえに、昔ながらのビジネスホテルという印象が、いまだに強いのはないだろうか。

だが、その固定概念を「サスティナブル朝食」により良い意味で覆した。例えば『スーパーホテルPremier池袋天然温泉』では、別名「ベジ活ビュッフェ」と呼ばれる朝食を提供。出来立てメニューを中心としたビュッフェ形式で、とにかくオシャレな食材が揃っている。

野菜・果物・豆類などがふんだんに並び、スーパーホテル名物の焼きたてクロワッサンはもちろん、オリジナルメニューとして全国各地の味噌を使った野菜たっぷりお味噌汁や、自分だけのトルティーヤを作ったりすることができる。

▲女性客にも人気の「サスティナブル朝食」

朝食会場では女性グループの姿が目立ち、まるで女子会のような雰囲気。清潔感のある空間で、朝から気持ち良く食事を楽しめる。それ以外にも、パウダールームを備えた女性専用フロアやウェルカムドリンクの導入など、随所に女性を呼び込むための努力が垣間見れる。

全国の系列から自慢の朝食を取り揃えたベッセルイン

新宿駅から山手線で2駅目にある「ベッセルイン高田馬場駅前」。高田馬場は早稲田大学など学生が集まる街で、新宿や渋谷などの繁華街を有するエリアと比べると“ビジホ不足”が顕著だった。

そんなところに登場したベッセルインだが、2023年3月にオープンして以降、すでにぎわいを見せている。都心へのアクセスの良さもさることながら、無料のアメニティ、万全のセキュリティ、そしてやはりこだわりの朝食ビュッフェがその要因を担っている。

朝食のコンセプトは「全国津々浦々 ベッセルホテルズ食べ歩きメニュー」。自前の人気メニューをピックアップしたところに自信がうかがえる。「いくらが大人気の海鮮食べ放題」(ベッセルイン札幌中島公園)や、あなご飯や深川飯、ラフテー(日替わり)など、目移りするような逸品メニューと豊富なデザートの数々は、宿泊客のわがままなリクエストにしっかり応えている。

▲全国のご当地メニューが一度に味わえる

リッチモンドホテルは「ロイヤルホスト」とのコラボ

「リッチモンドホテル横浜駅前」の朝食会場は、ホテル併設のロイヤルホストになっている。通常のロイヤルホストとは違った約90種ものメニュー(飲み物含む)が広がる。和・洋を中心に展開されており、ロイヤル社製のお馴染み・ジャワカレーやロイヤルホストの人気定番商品・パンケーキも用意。パンケーキは通常より小さいサイズで作られているため、さまざまな食材と組み合わせて食べることも可能だ。

そのほか上海焼きそば、中華まん、胡麻団子など中華料理も用意されており、中華街がある横浜ならではのご当地メニューとなっている(ロイヤルホストの朝食ビュッフェが食べられるリッチモンドホテルは他に仙台、天神にあり、仙台では牛タンカレー、天神ではとり天が食べられるのだそう)。

リッチモンドホテル横浜駅前では朝食を食べそびれた場合、チェックアウト時にフルーツケーキ・紫芋ラングドシャ・スタンダードコーヒー・ドリップバッグいずれかとの交換も可能。また、朝食券は2000円分の金券としてランチ・ディナータイムで利用することもできるという。

▲ロイヤルホストの人気商品・パンケーキが小さなサイズで登場

ここまで3つのホテルを紹介してきたが、いずれもビジネス利用のみならず、ひとり旅や家族旅行、カップルでのお出かけなど、どのシーンでも楽しめる施設となっており、また「泊まりたい」と思える空間だった。出張や旅行で東京を訪れる際の参考にしてほしい。