子どもの頃に海外で見たピザ職人に衝撃を受ける
「常に頭の中で食べ物のことを考えている」と苦笑いする速水。ちなみに、初めて料理に興味を持ったのは小学生の頃らしい。
「テレビ番組の『料理の鉄人』がきっかけで、料理をするようになったのが小学生のときです。でも、その前にもエピソードがあるんですよ。小さい頃、よく親に海外に連れて行ってもらっていたんですが、あるとき、どこかの国のピザ屋に入ったんです。
今でも覚えているんですけど、暖炉のそばのモニターに『トム&ジェリー』の映像が流れていて、そこのキッチンでシェフがピザ生地を手で回して作っていたんです。それを見て衝撃を受けて、家に帰ってから自分も粘土を使って同じように手で回して、粘土のピザ生地を作っていました(笑)」
料理人の手業に興味を持つところは、現在のエンタメ性の高い料理の見せ方にも通じるところなのかもしれない。例えば、オリーブオイルを高いところから振りかける仕草は「カッコいい!」と大きな話題にもなった。
「いやあ、あれは本当の話をしちゃうと、僕は背が高いから。80cmの高さの天板で186cmの人間が料理をするわけなのでね。でも、そこを注目してもらえるようになって、途中からはスタッフもノリに乗って、下から煽って撮ったりして。僕もテンション上がって楽しくやっていました(笑)」
『頂!キッチン』では、さらに彼のエンタメ性の高い料理の見せ方を極めているようだ。調理中にはレシピをいちいち紹介せず、一連の流れでショーのように見せる。そのやり方は、速水の料理番組の美学なのだろうか。
「料理中の映像にはレシピの分量を載せたくないんです。“まずはコレを入れて、次にコレを……”というやり方はもちろん親切なんだけど、ライブ感がないというか。退屈に見えてしまうときがあるように感じたんです。
最初は自分のためだけに料理をしていたんですが、今は目的が変わったなと思います。番組を通して人に振る舞うことがほとんどですし、なによりも“美味しかった。ごちそうさまです”と言ってもらうのが、本当に最高にうれしい瞬間です」
自分のことを飽き性だと話していたが、子どもの頃から好きな料理については大きな土壇場は経験せずに、さらなる探求が今でも続いている。海外での配信も好調だという『頂!キッチン』では、日本を飛び出して台湾まで食材を求めにロケに行った。
「個人的には以前、台北で食のイベントに呼んでいただいたことはあったんですが、今回は初めて宜蘭(イーラン)という地方にロケで行くことができました。“水のふるさと”と呼ばれていて、年間200日くらい雨が降るそうで、僕らが行ったときも雨が降っていました。そこには台湾でとても有名な三星ネギという食材があって。今回はこれでフレンチを作りました。
台湾では日本の番組がたくさん見られるそうで、我々が思っている以上に台湾の人たちは日本のことを知っているんです。今回、ロケした回を現地の人に見てもらえるのもすごく楽しみ。これをきっかけにして、さらなるアジア圏にロケに行くのもいいし、台湾にも面白いところがたくさんありますから、台湾編パート2を作るのもいいですよね」
俳優と料理を両立する速水もこみち。最終的な理想型について聞いてみた。
「理想はあるんですけど、口には出してないんです。だから、理想形は自分の頭の中だけに置きつつ、でもやりたいと思ったことは、ちゃんとしっかり口に出して言うようにはしています。
例えば『頂!キッチン』は、TVerやABEMAなどの配信で見ることができるんですけど、やっぱり放送網が全国に広がったらうれしいですね。そうやって一つ一つ、ステップを上がっていくなかで、理想形に近づく努力はし続けたいです」
『速水もこみちの食探求ロードムービー 頂!キッチン Season3』
※12月29日(金)は午前10:25~11:25 TVer・ABEMAで見逃し配信中。
日本の地元食材×速水もこみち×料理愛をテーマに、食の探求心を持つ速水もこみちが自らキッチンカーのハンドルを握り、全国を巡りながら生産者と出会い、そこで受けたインスピレーションをもとにオリジナル料理を振る舞うロードムービー的グルメショー。