すがやが考える“ロングスロー戦術”の是非

今年も全国高校サッカー選手権が閉幕しました。

決勝戦は、技術と運動量、そして柔軟な戦略で強豪を次々と倒してきた新興勢力の近江(滋賀県代表)と、決勝戦常連で高校サッカー界のラスボスとして圧倒的な強さで立ちはだかる青森山田(青森県代表)という構図。

近年の決勝戦でも、指折りに見どころが多いゲームだったように思います。

▲お互いに譲らない熱い決勝戦を見せてくれた イメージ: MY_Presents / PIXTA

青森山田というチームはあまりにも強すぎるがゆえ、また決勝で両チームが並んだときにもわかったように、毎年、毎試合、明確に他の学校とフィジカルに差があるため、ヒールのように扱われがちです。ロングスローの是非然り。

この辺の批判は大きくまとめると

「プロになっても通用する技術を身につけているのか? 高校サッカーで勝つために特化した戦術じゃないか?」

という、日本サッカーの発展のためという大義名分の元の意見だと思うのですが、僕に言わせればクソくらえです。

そもそも部活って負けたら終わりですもん。1試合でも多く、このメンバーでプレーしたいと思うのって、全国どのチームも共通じゃないですか。それを日本サッカーの未来の話とかされたら……ねぇ。

青森山田vsサンフレッチェ広島ユースの試合で話題になった、ロングスロー時の相手キーパーへのチャージも、ファウルを取らなかった審判が文句を言われるのはわかりますが、選手側が言われる意味がわからない。

相手を怪我させるプレーはもちろんダメですけど、セットプレーで相手にスクリーンプレーとか僕でもやってましたよ。だって、バレなければ点取れて合理的だもん。審判もゴール前でごちゃごちゃしているのを見るのは難しいし。

鈴木優磨選手なんて、あれがVARでバレても

「あんなの当たり前にやってきたのに、あれをファウル取られたらたまらない」

と、そりゃVARがなかった時代だから当たり前に横行してきただけだろって話なのに、めちゃくちゃ怒ってましたからね(笑)。

「VARがあるカテゴリーを目指しているからやらない」というチームは尊重されるべきですけど、「勝ち続けること」をアイデンティティに、勝てる確率を、瞬間、瞬間で上昇させるためのプレーを徹底してきた青森山田がやるのは至極当然かと思います。

技術でパワーをやっつけるのはサッカーの醍醐味ですが、逆にいえばパワーに屈して負けるってことは、それまでの実力だった、ということ。

その点、「3年後に青森山田と全国の決勝で戦う」というイメージを持って入学してきていたであろう今年の高校3年生の世代は、青森山田のロングスローで得点を奪われるチームがほとんどなかった。選手みんなが「それ(ロングスロー)も含めてサッカー」とわかっているからこそだと思うんですよね。

それって育成としてめちゃくちゃいいことだと僕は思います。そして激しくはありましたが、相手を怪我させるようなプレーを意図的にしている印象は、青森山田を長年見てきて全くないように僕は思います。

球際への基準値が高いうえにフィジカルが強いから、荒く見えるだけで、そのフィジカルだって全国で紛れもなく一番厳しい練習をして身につけたものですよ。

ここ数年の日本の高校サッカーは「一番厳しい練習をしたチームが一番強い」という、ある種、教育としては健全な形だと思います。