技術でスタミナで戦術で見る者を魅了した近江
そんな青森山田に対峙する近江高校は、同じ滋賀県で2005年度に全国制覇をした野洲高校のような局面を打開する技術があり、加えて青森山田に負けないくらい走れるチームでした。3年間で心・技・体を磨き上げたことがプレーを見るだけでわかります。
準決勝の堀越学園(東京A代表)戦では、5バックで引いて守る形から入り、途中から前5枚でハメに行く守備。
とはいえ、相手の中盤から後ろの7枚に対して5枚ですから、どこかが空いてしまう。そこに顔を出した相手のインサイドハーフに対し、センターバックが潰しに行くという、疑似5バックで罠を張ったと言えるような守り方。
そこから技術を活かしてボールを運ぶと、最も崩すのが難しい相手ゴール前は、技術でもパワーでもなく、ペナルティエリアに入っていく数の暴力でゴールを奪うという圧巻のゴールショー。ほとんどのゴールシーンで、相手ゴール前に6人ほどは入り込んでいました。
後半に入り、相手が3バックに変更したのを見て、即座に選手を変えて対応していたことからも、相手の出方によって何パターンも戦い方を用意してるように思えました。
〇【準決勝】第102回全国高校サッカー選手権大会 近江vs堀越
勝てるところで勝つ、また意図して勝てるところを作る、そのために準備してきたというような、3年間で積み上げた技術とスタミナ。そしてそれに裏打ちされた柔軟な戦略を持つ近江が、絶対王者である青森山田に挑む激アツな決勝戦。
いやぁ、面白い試合でしたね。5バックでゴール前を封鎖して無失点で試合を進めながら、狭い局面の崩しに活路を見出す近江。青森山田のハイプレス相手にも地上戦を試み、時に鮮やかに打開してみせます。
それでも試合全体をコントロールしながら、攻勢を強める青森山田。決してフィジカルに頼るわけではなく、相手を見てやり方を変えられる柔軟さや強かさも、ラスボスたる所以でしょう。
高い位置でボールを奪ってから、素早くゴール前に入れたボールをセンターバック3枚の狭い隙間で受けた福島健太選手が鋭い反転ボレーでゴール。前半をリードして折り返します。
一方、近江はここまでの勝ち上がりで戦術上のキーマンだった大型FWの小山真尋選手が、青森山田史上で最強と言われるCBコンビ相手に球際で劣勢だったなか、ハーフタイムに小山選手に変えてスーパーサブで小柄な山本諒選手を投入。
何か新たな策がありそうな予感がする後半2分。後半からポジションを変えたキャプテンの金山耀太選手のアシストから山本選手がゴール。
熱い! 熱すぎる!!
このあとも互いにアグレッシブな試合展開になりましたが、青森山田が圧巻のスピードとパワーで2ゴールを追加。
特にカウンターは圧巻で、近江も走れるチームなんですが、青森山田は根本的にみんな足が速い。そりゃ身体能力が高い子たちが、そもそも日本一厳しい練習を、雪が積もるなかで続けていれば足腰も強くなるか。
近江高校の3年間に対し、青森山田は中学校から6年間、その環境で鍛えられた子が多かったですしね。
その後、近江も何度かゴールに迫りますが、同点ゴール以降はシュート0本に抑えられ、青森山田が見事に優勝を飾りました。
〇【決勝】第102回全国高校サッカー選手権大会 青森山田vs近江
今年の決勝が、なぜこんなにも自分の心に響いたのか考えてみました。
青森山田と近江はともに、数年前まで相反するものとして言われていたような「合理性」と「苦しい練習を愚直に頑張る」という、2つの要素を共に持ち合わせているチームだったからだと思います。
だからこそ、ピッチ上ではあらゆる変化が分単位で起こり、ワクワクする試合になったんだなぁ……と。
3年(6年)かけて武器を磨き上げ、それを最大限活かすために頭を使う。僕が思う理想のサッカーチーム像に限りなく近い両チームなのだと思います。
選手の皆さま、お疲れさまでした! また違う舞台で活躍を拝見できることを楽しみにしております!!