車中泊をテーマにした漫画『渡り鳥とカタツムリ』で取材させてもらった、石川県穴水町の「田舎バックパッカーハウス」が半壊したの連絡があった。作中にも登場してもらった運営者である中川生馬氏(穴水町在住)が、自宅を「田舎バックパッカーハウス2」として、報道機関向けのスペースとして提供しているとの連絡があり、被災地の現状を聞いた。

(※2024年1月29日時点の情報に更新)

▲能登半島地震の復興に向けて役立っているキャンピングカー
令和6年能登半島地震でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。また、被災された皆さまに謹んでお見舞いを申し上げます。

被災地に負担をかけないキャンピングカー

2020年からの新型コロナウイルス感染症禍、2020年7月の熊本県での豪雨、2021年の静岡県熱海市で発生した土石流災害などの際も、中川氏が所属しているCarstay株式会社含むバンシェルター実行委員会は、被災地では宿泊施設が不足して状況で、災害現場を移動しながら、宿泊・食事・トイレ・暖房などを自己完結することができ、被災地に負担をかけない形での災害支援が可能となることから、キャンピングカーの貸し出しをしていた。

今回も登録されている500台のキャンピングカーや連携事業者の車両から5台を石川県珠洲市へ移送し、国際協力NGO「ピースウィンズ・ジャパン」の災害支援活動の拠点として、空飛ぶ捜索医療団「ARROWS」に貸し出したり、3台の車両を災害時の「動く休憩所」として、子どもたちを支援する教育NPO「カタリバ」のスタッフが使用したりしている。

今回の能登半島地震では、同社が運営している「田舎バックパッカーハウス」も被害に遭っている。中川氏の家族は地震発生時は帰省しており人的な被害を免れたが、残念ながら「田舎バックパッカーハウス」は厳しい状況とのこと。1月4日に穴水町に戻り、自宅を「田舎バックパッカーハウス2」として報道機関向けに開放しながら、自らも復興に向けて動き出している中川氏に話を聞いた。

▲被害に遭った「田舎バックパッカーハウス」

「地震のニュースを見て、会社や知人に連絡しポータブル電源を集めてもらって、水や食料などもハイエースに詰め込んで穴水町へと向かいました。深夜0時ごろに実家を出て、途中で避難所などに寄りながら家に着いたのが夕方16時ごろでした。

自宅は雨漏りはしていましたが、それくらいの被害ですみました。ただ、田舎バックパッカーハウスのほうはダメですね。まだ片付けをすることもできてないのですが、建物を使うことは難しいので、この土地をどう利用するかの構想を練っているところです。

近所にあるスーパー「どんたく」は営業していないですが、一部小さなスーパーやドラッグストアが何軒かあるので買い物はそこで。自宅に電気は通っていて、水道はつながっています。キッチン、トイレ、シャワーなどの生活用水は全て井戸水で、ここに移住する際、この家を選んだポイントが井戸だったんですけど、まさかこういう形で役立つとは思ってなかったです。

田舎バックパッカーハウス2として、自宅をメディア関係者に開放していましたが、最近はインフラ関係の方たちにも使ってもらっています。ここには電気もあるしシャワーもある。復興に関わる方たちから“拠点として使いたい”という問い合わせが多くなっています。

僕が所属している会社などが災害支援用に貸し出しているキャンピングカーが、来週中で合計20台くらい石川県に入ってきます。これまでも、キャンピングカーはさまざまな被災地でシェルターがわりとして活躍していましたが、今回が台数が多いですね。宿泊施設も被害を受けている状況なので、移動もできて泊まれるキャンピングカーが役立っています」

レジャー目的のイメージが強いキャンピングカーではあるが、今は復興に向けて動き出している人々を乗せて能登半島を走っている。

▲地震によって崩れてしまった能登半島の観光地「見附島」