好ゲームを演じるもJ1王者の“したたかさ”が一枚上手
そんなわけで、個人的にブッ刺さるものが多いゼルビアのフットボールを見に行ってきました。
新宿駅には町田の濃い青と神戸のクリムゾンレッドだけではなく、ヴェルディの緑、FC東京の青と赤もあふれかえり、「なんで同日開催なんだ……」と悔しくなるほど味の素スタジアムに後ろ髪を引かれましたが、国立競技場へ。
ゼルビア系列のフットサル場で、よく一緒にボールを蹴る町田出身のゼルビアサポーター・どきどきキャンプのサトミツさんこと佐藤光春さんと、制作会社の皆さんと合流。
こういうビッグゲームのとき、スタジアムには「久しぶりに見に行こうかな」なんていう層のサポーターも多く、いろんな世代のユニフォームが入り混じるのはあるあるですが(昇格プレーオフのヴェルディはすごかった)、ゼルビアもSVOLME社のユニフォームを着ている方が思った以上に多かったです。
町田を昔から見てきた人は感慨深いだろうなぁと、こちらも勝手に感情移入。
スタジアムに入場すると、ゼルビア初の国立開催とあって、昔から応援してきたサトミツさんは特に心動かされるものがあるようで
「こんなスタジアムで……すごいね」
と、J1じゃないとなかなか味わえなかったであろう雰囲気に感動しています。
とはいえ、メインやバックスタンドには私服の方も多かったので、これから町田が歴史を深めるたび、このスタンドが動員数だけでなく、色味もどんどん青く変化していくというのも見守っていきたいな、と僕は思うのでした。
相手の神戸は、町田的には一番厄介な存在であろう大迫勇也選手が怪我で欠場。黒田監督は青森山田高校を率いていた2008年度の高校サッカー選手権大会で、2点リードから大迫選手の2ゴール1アシストで逆転負けしてますから(4-3で鹿児島城西が勝利)、そこの再戦も楽しみでした。
大迫選手が不在でも、昨シーズンのJ1王者の豪華な布陣にワクワクを抑えきれない様子の町田スタンド。
町田ゴール裏は他の席と違ってまだ少し空席が目立つけど、熱狂的なサポーターはチームの歴史と共に増えていくもの。ゼルビアの快進撃はここから始まったと、いつか思えるようなゴール裏の景色です。
そして、キックオフの笛が鳴ります。
いつものようにハイプレスとロングスローで多くのチャンスを作るゼルビア。
ロングスローにブーイングする神戸サポーターに
「イヤがってる! イヤがってる!!」
とニンマリの町田サポーター。僕も大好きな柴戸海選手(浦和レッズより期限付き移籍)の生き生きとしたプレーにニンマリ。
昨季の浦和レッズでは少し自信喪失気味に見えた柴戸選手もそうですし、オ・セフン選手は清水エスパルス時代に、ナ・サンホ選手はFC東京時代に見てましたが、どちらもこんなに良い選手とは思っていませんでした。
町田だからJ1の頂点を狙える、町田が活かした選手と言えると思います。
しかし、町田は序盤の攻勢をしのがれると、徐々に試合のテンポがスローダウン。神戸がそう仕向けたことは明白でした。
普段と少しやり方を変え、守備時に4-4-2という町田と同じ形を構成して、町田にボールを握らせ、技術での打開を強要するような形で町田の良さを消します。
また、町田が勢いに乗れそうな場面で水を刺すようにファウルをして止めるなど、相手がイヤがることをするという面でも一枚上手の神戸。
「町田のサッカーは汚い? そんなの俺たち世界レベルでもっとやってきたよ」
という感じ。特に酒井高徳選手のしたたかさが目につきました。
そして前半終了間際、宮代大聖選手の運び出しから最後は山内翔選手。決定機こそ町田のほうが多いように感じましたが、終了間際に決めるあたり強い。
そして後半、徐々に町田の足が止まりはじめ、神戸のゲームプラン通りに。終了間際には、町田のお株を奪うようにセットプレーから武藤嘉紀選手のゴラッソ!
町田がずっと決めきれなかった、セットプレーから訪れたチャンスを一撃で決めてみせます。世界を知る男たち……。
さあ、残すはアディショナルタイムのみ。内容的にも敗色濃厚のなかで96分。ついに攻め上がったCBのドレシェビッチ選手が神戸の牙城を破ります。
1点差。そこから残り2分、町田スタンドの一体感は素晴らしく、ロングボールのたびスタジアムが沸き上がりました。
試合はそのまま終了し神戸が勝利しましたが、私服でメインスタンドやバックスタンドで見てたお客さんも最後の2分間の熱狂を味わい、「次はユニフォームを買ってゴール裏に行こう」と思ってもらえるような熱い熱い試合でした。
〇【FC町田ゼルビア×ヴィッセル神戸|ハイライト】2024明治安田J1リーグ第8節|2024シーズン|Jリーグ
観客動員は39,080人。町田史上最多動員で、新国立開催のJリーグでは最少だそう。
でも、他のチームのサポーターはそんなことを揶揄してる場合じゃないですよ。J1初挑戦、数年前までJFLでプレーしていた町田がここまで強くなって、スタジアムを熱狂させたんです。サポーターの熱量や迫力だって、すぐに追い上げてくるはずです。
そして今後、国立では僕の愛する浦和レッズとの試合もあります。
僕には町田のサッカーがブッ刺さる理由が、もうひとつあるんです。
『町田みたいなチームを、技術でやっつけるのがフットボールの醍醐味でしょ』
倒して美味い酒を飲ませてもらいますよ。