2024年MLBのシーズンが開幕しました。

史上最多となる13人の日本人選手が活躍をしているなか、やはり一番の活躍を見せているのは、今オフに史上最高額の契約でロサンゼルス・ドジャーズに加入をした大谷翔平選手。

※2023年WBCに出場をしたセントルイス・カージナルズのラーズ・ヌートバー選手、レッドソックスマイナーの上沢直之投手を含める

記事執筆時点では、打率.360、OPS 1.040とリーグトップ並みの成績を残しており、選手の総合貢献度を表す指標Wins Above Replacement (WAR)においても、リーグ9位の1.1勝(Fangraphs社計算)。打者単体としても引き続きエリート級の成績を残せています。

さて、その大谷選手に次ぐ成績を残している日本人選手は誰でしょうか。

渡米6年目のサウスポーが順調な滑り出し

意外な名前に驚く読者も多いかもしれません。ずばり、トロント・ブルージェイズの菊池雄星投手です。

現在、4試合21.2回を投げて防御率2.08、17安打8四球に対して29奪三振。前述のWARでは0.8勝、と日本人選手では堂々の2位、全投手内でも同率4位となっています。開幕から15.1回防御率0.00の今永昇太選手(シカゴ・カブス)の0.7勝を僅差ながら上回っています。

成績でも投球の質でも、じつは昨シーズンの後半から明らかに渡米以来、最高の仕上がりとなっていますが、この好調の要因は何か。

まずは制球力の改善。2022年にはキャリアワーストの四球率12.8%を記録してしまったあと、昨年23年は6.8%とほぼ半減に成功。今季はここまで9.1%と若干悪化しているものの、その代わり奪三振率が33%と圧倒的にキャリアハイを更新中。

実際の投球を見ても、ストライクゾーンギリギリをピンポイントで投げ込めており、見逃し三振を奪えています。

現地4月17日のヤンキース戦では、6回1失点4安打1四球9奪三振と好投しましたが、特に好調のアンソニー・ボルピ選手に対するアプローチが印象的でした。

今季は選球眼が大幅にパワーアップをしたボルピ選手に対し、1打席目はカウント1-1からの内角低めギリギリのストレートで追い込み、その後スライダーにて奪三振。2打席目は1-2に同じ内角低めのストレートで見逃し三振。3打席目は1-0でゾーンのフロアを完璧に狙ったカーブで空振りを奪い、またもや低めのストレートで見逃し三振。思うがままにボールを操れていました。

昨季から投げ始めたカーブが有効な武器に

そして投球内容も変わってきています。

一番わかりやすいのはストレートの球速アップ。メジャーデビューの2019年の平均球速92.5mph(149km/h)から年々着実に上がり、2024年現在では平均95.5mph(154km/h)まで増加。球速が全てではないものの、明らかに球の質および対球種の成績が向上しています。

そしてカーブの習得。2023年から本格的に投げるようになり、使用率19.3%を占め、今季はさらに高い25.7%をマーク。被打率はわずか.100、強打率も極小の15.4%と有効な武器として台頭してきました。

最後は根性論になってしまいますが、メンタル面においても好循環が生まれているように見受けられます。

強打者相手や大事な場面で三振を奪った際には雄叫びを放ち、チームメイトや番記者によると「とても楽しそうに投げている、そして周りにも好影響を与えている」と成績が芳しくなかった2022年までの様子とは打って変わって見えます。

ブルージェイズのローテーション上位を任されている責任と、好成績を残せている勢いにそのまま乗って、念願の大ブレイクを果たしてほしいところですね。

メジャーデビュー以後、4年半は燻ってしまったなかでも、諦めず辛抱強く改善を続けた功を奏する姿は、日本でもより注目されるべきではないでしょうか。

花巻のもうひとりのメジャー戦士、菊池選手をぜひ応援して、さらにMLBを楽しんでいただければと思います。

▲シーズンを通してどんなピッチングを見せてくれるのか楽しみである 写真:UPI / アフロ