皆さんは「湯治」という言葉を聞いたことがありますか? 聞いたことはあっても、その内容は詳しくわからない……という方が多いのではないでしょうか。

湯治とは、本来、温泉地に長期間滞在して、体の療養をおこなう行為のことを指します。湯治の基本的な決まりは、1日に3回程度、15分程度の入浴をし、その他は部屋でゆっくりしたり、温泉街を散策したりして、とにかく心身を休めるというもの。

その昔は、1週間の滞在を基本として、それを「一廻り」と呼び、「三廻り」、つまり3週間は温泉地に滞在することが、最も体調を正常に戻してくれるとされていました。

しかし、3週間も温泉地も滞在するのは難しいという方が多いはず。現在では「プチ湯治」「現代湯治」など、短期間で湯治を身近に楽しもうという動きが広まりつつあります。旅にはもともと「転地効果」というものがあり、日常から離れた環境に身を置くことで、自律神経が整い、リフレッシュすることができると言われています。

短期間であっても、こうした旅の効果と温泉の効能によって、湯治では心と体の両方を癒すことができるのです。

さらに、現在は外国人観光客の増加に伴い、有名な温泉地は値上がりの傾向が顕著です。こんなときこそ、訪れてほしいのが「湯治宿」! 手頃なところでは、1泊一人1万円を切るところもあり、リーズナブルに本格的な温泉を楽しむことができます。

そこで今回は、オススメの湯治宿4つを紹介していきたいと思います!

微温湯温泉「旅館二階堂」(福島県)

1軒目は微温湯温泉「旅館二階堂」です。

▲微温湯温泉「旅館二階堂」 写真:筆者撮影

こちらの魅力は、なんといっても温泉の特徴にあります。微温湯温泉の名前の通り、源泉の湧出温度が31.8度とぬるめ。ほぼ体温と同じ温度のため、熱くも冷たくも感じない「不感温浴」が体験できるのです。

「不感温浴」のメリットは、とにかく長湯ができること! エネルギー消費が最も少ない温度帯のため、心ゆくまで温泉を堪能することができます。

▲「不感温浴」が体験できる 写真:筆者撮影

泉質も非常に珍しく、酸性−含鉄−アルミニウム−硫酸塩温泉。硫酸塩泉の特徴として、カルシウムが多く含まれており、切り傷・やけどなどの怪我の治癒に良いとされています。また、血管を拡張させる効果があるため、高血圧の改善や、動脈硬化などの生活習慣病の予防にも役立ちます。

長湯できるのが特徴と先述しましたが、硫酸塩泉は油分を洗い流す効果が強いため、乾燥肌の方は、入浴後の保湿を忘れずに。

▲部屋から見える木々たちも鮮やか 写真:筆者撮影

建物は、昔ながらの木造づくりで、部屋も過不足ないサイズ感。新緑の季節には、広縁の窓から鮮やかな緑を望むことができます。

【料金】※2024年9月現在
素泊まり(自炊):4,585円(消費税・入湯税込)
1泊2食付き長期滞在(5泊以上):8,070円(消費税・入湯税込)

「北温泉旅館」(栃木県)

▲北温泉旅館 写真:筆者撮影

2軒目にご紹介するのは、北温泉旅館。こちらは湯治宿のメッカとも言える場所で、映画『テルマエ・ロマエ』のロケ地になったことでも知られる場所です。

まず訪れて目に入るのは、旅館の前の巨大なプール。このプールに満たされているのは、すべて温泉。それもそのはず、ここ北温泉は自家源泉が3本あり、総湧出量はなんと毎分1620リットルという脅威の量を誇ります。

▲旅館前にあるプールは温泉となっている 写真:筆者撮影

そんな北温泉の名物といえば、ここ「天狗の湯」。実際に入浴すると、写真で見るよりも壁に飾られた天狗の存在感に圧倒されます。異世界感漂う、独特な雰囲気は一見の価値あり。

小さめの浴槽に豊富な湯量の源泉がかけ流されているので、温泉の鮮度も抜群です。泉質は単純温泉ですが、その新鮮さのおかげか、浴後の肌のツルツル感は天下一品。少し熱めなので休憩しながらの入浴がおすすめです。

▲北温泉の名物「天狗の湯」 写真:筆者撮影

現在、北温泉では、食事の提供を休止しているため、素泊まりのみ受付中。自炊場には、調味料や調理器具が一通り揃っているため、材料さえ調達していけば、自分の気の向くままに好きなものを作ることができます。

自炊場での洗い物中に一緒になったお父さん方は、あんこう鍋を作ったと自慢げに教えてくれました。こういった自炊場での交流も、湯治場ならではの楽しみではないでしょうか。

【料金】※2024年9月現在
1人1泊4,900円、4泊以上4,400円
特別期間(休日前、ゴールデンウィーク、お盆、紅葉時期、お正月)を除く