お金の手続きがうまくいかない!!
社長になってすぐ、さまざまな「手続き」をした。会社を設立して社長に就任する手続きに関しては、税理士さんが動いてくれたので、僕自身はそこまで何もしなかったのだが(でも、すごいお金かかった)、僕個人でやらなければいけない手続きにとても苦労した。おそらく、これは社長だからというよりは、独立した人たち全員に待ち受ける障壁だと思う。
僕は、これまで会社が「天引き」という形で支払ってくれていた諸々のお金を、自分で払わなければならなくなることに驚愕した。もちろん、会社員時代も給与明細を見て「なんかいっぱい引かれてるなぁ」と思ったけど、その反面、もろもろ面倒くさい手続きを会社がやってくれてたんだなぁと知った。
失って初めて気づく会社の偉大さ、まるで『ごんぎつね』。テレ朝お前だったのか! いつも手続きをしてくれていたのは。
健康保険は「任意継続」というシステムがあって、2年間はテレビ朝日の保険を使わせてもらえることになった(これを書いている時点でリミットが近づいていることに気づいてよかった)。年金関係は自分で役所に確認して手続きをした。
特に「確定拠出年金(iDeCo)」を、企業型から個人型に切り替えるのがダントツで難しかった。完璧に書いたつもりで提出した書類が不備で3回も戻ってきた。これ、本当にみんな自分でやってるの? こんなに難しいことある? カスタマーサポートに電話しても「順番におつなぎします」と保留音の永遠ループだった。結局、僕の順番は来なかった。
僕は「自分で調べることの大切さ」を痛感した。「もういいや」となって、途中で諦めて手続きをしなかったら自分が損をする。もらえるお金がもらえなくなる。大企業にいたら見えにくかったけど、国はそんなに親切じゃない。
全ては自己責任。
お金を何にどれくらい支払っているのか、いまだによくわかってないけど、国にお金を納めている感覚を強く持つようになった。「国民の金を無駄遣いするな!」と抗議している人たちの気持ちが、少しわかるようになった。
余談だけど、僕は「捺印」が致命的に下手だった。強く押しすぎてにじんだと思えば、弱く押して半分欠けていたり、手続きの書類に毎回3個くらい捺印して、ようやくちゃんと押せていた。今は電子化されて、どんどんリアル捺印をしなくて済むようになり、本当に助かっている。
将来が不安すぎる!!
社長になったはいいものの……いろんなお金を納めなければいけないことを知った僕は、人生初の「節約」を敢行した。今までお金に無頓着だったので、節約のやり方を全く知らず、とにかく全部の出費を抑えることにした。人におごるのをやめたり、サブスクを解約したり、自炊をした。
お昼にスーパーで1人前100円のつけ麺を買い、麺を食べ終わったあとスープだけ残す、夜にうどんを茹でて、そのスープにつけて食べたりした。今や若手芸人だって、そんなことしてないだろう。“安定収入がなくなった状態+納めなければいけないお金がたくさんある”というのは、僕を追い詰めるには十分すぎた。
社長になってしばらく節約生活をしていた僕は、妻の一声で節約生活をやめた。妻はセコセコしている僕に一言、「未来の自分に期待しなよ」と言ってくれた。
僕はハッとした。たしかに!
僕は将来への不安から節約をしていた(もちろん、節約が悪いことじゃないけど)。いつか貯金がなくなってしまうんじゃないか、仕事が増えないんじゃないか、落ちぶれるんじゃないか……いつの間にか未来の自分を疑っていたのだ。
いったい僕は、なんのために会社を辞めたのかわからなくなっていた。そうだよ、未来の自分に期待して退職したんじゃないのか。
妻にその一言をかけてもらって以来、僕はお金を使うようになった。人とごはんを食べる、若手芸人にごはんをおごるなど、見返りを求めているわけじゃないけど、「投資」のような意識でお金を使うようになった。
そんな投資の一環で「大谷翔平と同じマットレス」も買った。マットレスが大谷翔平と同じなだけで、僕は「テレビPとラジオPの二刀流」ができる気がした。いま思えば、そんなPは山ほどいる。
「昇降する巨大な電動デスク」も買った。立って仕事をするのは体に良いらしく、ウキウキで立ちながら仕事をしていたが、気づけばここ1年以上、デスクは昇降してない。座ったほうがちゃんと仕事ができるんだもの。この買い物は、もしかしたら「浪費」だったのかもしれない。
他にも「威厳がない」「どんな服を着たらいいかわからない」「見積書の書き方がわからない」などなど、多種多様の「社長になったはいいものの……」が、毎日のように押し寄せてくるが、そのたびに悩んで試して(たまに失敗して)、なんとか乗り越えている。
会社員時代が“ぬるま湯だったなぁ”と思うのは、自分がサボっていたせいもあると思うけど、社長になった今のほうが“野良”で戦っている感じがする。これからも「社長になったはいいものの◯◯」を1つずつ解決しながら、傷だらけで前に進んでいきたいと思う。