ドラマ『脳にスマホが埋められた!』(日本テレビ系)で女優デビューを果たし、『恋する母たち』(TBS系)や『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』第7シリーズ(テレビ朝日系)など、数々のドラマに出演してきた結城モエ。

そんな彼女が主演を務める映画『乱歩の幻影』が7月26日に公開される。今回、結城が演じるのは、江戸川乱歩の魅力にとりつかれた弓子。ニュースクランチでは、初の主演を務める彼女に、映画の見どころや文学との出合いについて聞いた。

▲結城モエ【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-INTERVIEW】

好奇心旺盛な弓子の感覚が私と似ていた

結城モエにとって映画『乱歩の幻影』は初主演作。最初にオファーをもらったときは、どのように感じたのだろうか。

「最初は信じられなくて、しばらくは実感がわかなかったんですけど、家族に話してみると、“え、すごい!”と言ってくれて、ようやく主演としての実感がわいてきました」

この映画は幼い頃に見た1枚の写真によって、江戸川乱歩の小説にとりつかれたように成長した女性が、夫の書棚で発見した1本のエッセイに導かれるというストーリー。完成した映画についての感想を聞くと、秋山純監督と原作者・島田荘司氏とのエピソードを話してくれた。

「秋山監督と島田先生とは初めてお仕事をさせていただいたんですけど、好きな世界観や考えることが似てるんです。話していても昔から知り合いだったのかなと感じるぐらい、感性が一致しました。

だから、完成した映画を見たときも、とても好きな世界観に仕上がっていて。“あ、そうだよね監督!”みたいな気持ちで、すごくうれしかったです。お二人と共通点があるからこそ、この映画に携わることがことができたんだな、と感じました。

私は本を読んだりとか、何かを学ぶことが大好きで、監督はそういう部分をすごくよく思ってくださっていて。“結城さんのいろいろと考えたり、なんでも学ぶ姿勢はとてもいいよね”と褒めてくださいました。私も監督や島田先生の何かを学ぶ姿勢を尊敬しています」

『乱歩の幻影』は、文学がひとつのテーマにもなっている。幼い頃から文学に親しんでいたという結城。文学との出合いを聞くと興味深い答えが返ってきた。

「小学生の頃に『怪談レストラン』という本が学校で流行っていて、読み始めたのが最初の出合いでした。私は読んで面白かったことを人に話すのが好きなんですが、子どもたちのあいだで怖い話って流行りますよね。なので、夏休みで遊び来てたイトコによく話をしていました。

大人になってからは、時代小説とか、世の中で実際に起こった話とか、そのときに気になった本を読んでいます。最近、読んで興味深かったのは日航機の墜落事故に遭われた方が書かれた本です。重い話ではあるんですけど、実際に起こった話を読むと感情がうごめき、心が動かされました」

彼女の心を引きつける読書の魅力とは?

「ひとつは好奇心です。こういうときに私も悩んだり乗り越えたりしたなとか、昔の人の話だと、なぜ時代は違うのに人は同じことで悩むんだろうとか、そんなことを考えたりしながら、自分の人生で取ってきた選択や考え方と照らし合わせて、答え合わせみたいにしていきます」

結城が演じる弓子は江戸川乱歩の愛読者で、好奇心が旺盛な女性。そんな弓子との共通点を聞いた。

「映画に出てくる江戸川乱歩の『蟲』という作品を読んだことがあるんですけど、私は『蟲』のような狂気じみた作品であっても共感できるタイプなんです。人を殺してしまって、近くに置いていたら虫がわいてしまって、その中で埋もれるようにその人も死んでいく、という衝撃的な内容ではあるんですけど、人間は誰しもそういう要素を持ってるんじゃないか……など考えてしまって。

弓子は本を読んでいくなかで、のめり込んで“こうなんじゃないか、ああなんじゃないか”と、自分なりにいろんな空想や考えを膨らまして、普段の私よりもさらにもう一歩踏み込んだところに行ってしまうんです。その弓子の感覚が、私と少し似ているなと感じるところもあって、弓子という存在が近くに感じられて、これだったら弓子を演じたいと思えました」

現場の空気を柔らかくすることを意識していた

好奇心旺盛な彼女の一面を知ることができたが、さらに深堀りしてみた。

「テレビのニュースでは、毎日いろんなことが報道されますけど、限られた時間のなかで伝えなければならないこともあって、表面のみが報道されることもあると思うんです。でも、私はその先のことが気になってしまって、実際に海外のサイトを調べたり、さらに深く知りたくなってしまうんです。その結果、すごく悲しい気持ちになってしまうこともあるんですけど……。

外で起こっていることや、他人に起こってることに対して、私には関係ないと思えないタイプというか。もし、これが私の家族に起こったらどうしようとか、全部当てはめて考えてしまうところがあるんです」

▲好奇心旺盛な弓子の感覚が自分と似ていたと教えてくれた

今回は座長という立場でもある。撮影現場ではどのようなことを意識していたのだろうか。

「いろんなタイプの座長さんがいらっしゃると思うんですけど、今回に関しては(高橋)克典さんや常盤(貴子)さんのように、しっかりされている方々が周りにいらっしゃったので、私に求められていることは、空気を柔らかくすることだと思いました。

緊張したりピリピリしていると、やるべきことに集中できなくなることもありますよね。なので、私だけは何があっても動じない、くらいの寛容なスタンスでいることを心がけました。周りからしたらわかりづらいとは思うんですけど、それが逆に自分らしいやり方なのかなって」