7月30日(火)「『なんか嫌』の直感は当たる」

かつてテレビ局に在籍していた頃の知り合い(50代男性)から「俺も独立したからごはん行こう」という連絡がきた。

そこまで乗り気ではなかったけど、まぁ1回くらいならいいかと思って、その知り合いが指定するレストランでごはんを食べた。

ごはん会の中身を簡潔にまとめると「何か一緒に面白いことをしようよ」だった。このセリフほど胡散臭いものはない。「なんか嫌」だなぁと思いつつ「はい、ぜひ」と答えてその会はお開きとなった。思い返せばそのレストランも薄味で間接照明でなんか嫌だった。

そこから「このごはん会を月1の定例にしよう」と言われ、のらりくらり断ったり参加したりしていたのだが、ある日その知り合いから

「高橋くんの会社に仕事を発注したい」

という連絡がきた。「なんか嫌」という印象は消えていないけど、仕事の発注はありがたいので引き受けることにした。

作業内容を聞くと「【TikTokで配信する面白い動画】を集めているサイトがあるので、そこに掲載する動画を1本作ってほしい。制作費は○○万円」というモノだった。

これもふわっとしててなんか嫌だなぁと思ったのだが、逆になんでもいいのかと思い、これを機に一緒に仕事をしてみたかった脚本家さんに台本を発注して、実際に撮影&編集まで行ってその知り合いに納品した。

すると納品した数日後にその知り合いから

「動画サイトの担当者から“この動画の内容だと制作費は払えない”と言われたから1から作り直してくれ」と言われた。

僕は耳を疑った。台本の段階でも編集の段階でもその知り合いにチェックを回していたので、このタイミングで全部ひっくり返されるとは思っていなかった。1から作り直すことは可能だけど、それまでの脚本費、撮影費、編集費などもろもろの費用は発生してしまっている。ただその知り合いは追加で費用を払うつもりはなさそうだった。

交渉しようかとも思ったのだが「面倒くさい」が勝ってしまい、「分かりました、この話はなかったことにしてもらって大丈夫です」と返事をして、作り直さずにその仕事をキャンセルした。

もちろん動画を作った分の費用は回収できないし、制作に携わった人には申し訳ない形になってしまったが、僕はどこかで「やっぱりな」と思ってしまった。勉強代は高くついたけど、最初に覚えた「なんか嫌」という違和感は当たっていた。今後もこの直感は大切にしていきたい。

この件以来その知り合いから音沙汰はない。ただおかげさまで「面白い動画」1本がストックできたので、いつかどこかで絶対公開したいと思う。

▲先日行った「コンテンツ東京」という展示会にて。断りきれずに沢山チラシをもらいました。

8月1日(木)「相談役」兼「ペースメーカー」の田村さん

弊社には田村さん(仮名)という相談役がいる。とはいえ別に正式な役職ではなく、だいたい隔週に1時間オンラインで会社の進捗や困りごとをざっくばらんに相談させてもらっている間柄だ。弊社にとってこの田村さんの存在が本当に大きい。

田村さんとの出会いはDMだった。もともと僕が制作しているコンテンツのファンで、その延長で僕を認知してくれて、僕が独立したことを知ってわざわざ「協力できることはないか」と連絡してくださった。

田村さんは僕より10個くらい年上の別業界の社長さんで、かなりちゃんとした会社をしっかり経営してらっしゃる人だ、説明が浅いのは僕のせい。

一度ご挨拶をしに田村さんの自宅兼オフィスにお邪魔したことがあるのだが、誰もが知っている「○○ヒルズ」のめちゃくちゃ上の階だった。部屋にたどり着くまでに10回くらいセキュリティゲートを突破したし、冗談抜きで東京タワーがものすごい下に見えた。住んでいるところが全てではないけど、さすがに只者ではないと思った。

田村さんには日々、

「コワモテの人に謝罪しなきゃいけない案件があるんですけど、どうしたらいいですか?」

「某企業にだいぶ不利な条件をつきつけられてるので交渉したいです」

など、社長歴の浅い僕がこれまで経験したことのない困難に立ち向かうスタンスを相談させてもらっている。社長の先輩である田村さんは大抵の修羅場はくぐってきているようで、どのお悩みにも優しく的確なアドバイスをくれる、先人の知恵は尊い。

そして何よりも「2週間に1回必ず相談にのってくれる」というのが、仕事をする上でかなりいい「ペースメーカー」となっている。2週間前から進捗がなかったら申し訳ないし恥ずかしいので、停滞しているプロジェクトも、田村さんとの打合せまでに何かしら前に進めようと頑張れるのだ。

田村さんは田村さんで僕の経験談や最新の業界情報を聞くのが勉強になると言ってくれて、「WIN-WIN」の関係として無償で相談に乗ってくださっている。僕からしたらこちらがWINすぎる気もするのだが……。

当然最初のうちは「何か裏があるのでは?」「いずれ何かに勧誘されるのかしら」などと勘繰っていたが、かれこれ1年半以上同じペースで相談に乗ってくださっているので、本当に善意でやってくれているようだ。善意には善意を、田村さんが困った際は全力で相談に乗りたいと思う。

次回の『TP社長日記』は、9月12日(木)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
高橋 雄作(たかはし・ゆうさく)
株式会社TPコーポレーション東京X代表取締役。高橋プロデューサー略して「TP」と呼ばれている。東京都出身。1987年9月27日生。早稲田大学政治経済学部卒。テレビ朝日に新卒で入社し「Qさま!!」「お願いランキング!」「もういっちょシリーズ(金属バット・蛙亭・ランジャタイほか)」などを担当、PやDを務める。2022年8月に独立し会社設立。「金属バット無問題(YouTube)」「板橋ハウスのラジオディア(stand.fm)」など様々なコンテンツを手掛ける他、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフP、ライブ配信サービス「SHOWROOM」コンテンツDも務める。また「新横浜ラーメン博物館」にあるラーメン店「浅草来々軒」のオーナーも務めている。お笑いと北海道日本ハムファイターズとフライドポテトと柿の種が大好き。Twitter:@takahashigohan、オフィシャルサイト:株式会社TPコーポレーション東京X