若手芸人が一目置く憧れの漫才師として、近年はライブシーンのみならず、メディアでも活躍の場を広げている囲碁将棋。全国各地の絶景に自前のサンパチマイクを持ち込んで漫才をする「ZEKKEI MANZAI」は、公式YouTubeチャンネルの人気コンテンツで、テレビ番組などにも派生。

芸歴20周年の今年は、2月の東京・日比谷野外音楽堂を皮切りに、全国の絶景スポット6か所での撮影を兼ねた単独ライブを開催中だ。8月の広島では、木下サーカスのテント内で撮影予定。10月の大阪では、今年いっぱいで店舗全てが閉店することになった、味園ビルにある味園ユニバースで撮影とライブが行われる予定となっている。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2024年9月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

新ネタ200本。全公演ノリで全部ネタを変えた

――現在、全国ツアーの真っ只中です。今回のツアーはYouTubeでやっている「ZEKKEI MANZAI」にちなんでのものなんですよね。

文田大介(以下、文田):僕らもそうですけど、撮ってくれているカメラマンさんとか、スタッフさんそれぞれで、あまりほかの人が撮ってなくて撮ってみたい場所を持ち寄って決めました。だから、今回のツアーは「ZEKKEI MANZAI」を撮ることがメインで、撮る場所が決まったあとに。

根建太一(以下、根建):その会場でね?

文田:ライブができる場所ならそこでするんですけど、できない場所だった場合は近くの公民館を借りてライブをやってます。宮城の劇場がすごくカッコよくて、撮影もそこでしたんですけど。

根建:あそこはすごかった。宮城の劇場は地元の人もあんまり行かない場所にあるらしくて。仙台駅から車で40分くらいかかるところなんですけど。

文田:七ヶ浜にある、七ヶ浜国際村ホールっていうところで。

根建:宮城県住みます芸人で、同期のお野菜太郎が見に来てくれたんですけど、「どこでやってんだよ」って言われました(笑)。お野菜太郎ですら足を踏み入れたことがほとんどない場所らしくて。

文田:うしろがガラス張りになってて海が見えるんです。ツアーの一発目が日比谷野外音楽堂で、2回目がそこで。ずっと劇場が凝ってるところでライブやっていくのかなっていう雰囲気を出してたんですけど、そのあとの栃木、新潟、このあとにある広島は普通の会館です。

――芸人さんたちがツアーでいつも回っているような大都市が少ないですが、お客さんはどういう感じなんですか?

文田:新潟は人が来ないだろうなって諦めてたんです。けど、ちゃんと来てくれたうえに、ほとんどが地元の人で。

根建:うれしかったですね。

文田:僕らは神奈川県住みます芸人で、昔、神奈川58市区町村、全部回ってライブをやったことがあったんですけど、そのとき来てくれたのは同じお客さんばっかりだったんです。そうなるとネタを変えざるを得なくて、58か所を回るために新ネタ200本作ったんで、今回もそのノリで全公演で全部ネタを変えてるんです。

――今回は過去の漫才を中心に披露することが告知されていますけど、その内容を変えていると。

文田:そうです。けど、毎公演、地元の人が見に来てくれるから、そんな必要なかったなって。損してる状態です、今。

根建:いや、損はしてないだろ(笑)。

文田:ネタを変えてるっていうのが知られて、それならって来てくれる人もいますね。あと、何がいいって全公演、絶妙に満員じゃないことなんです。写真で見ると満員に見えなくもない埋まり具合なんですけど、ちゃんと埋まってないんですよね。

根建:今までの会場全部、同じくらいの埋まり具合ですね。

文田:全公演満員はもちろんカッコいいけど、見たい人が全員見られてるくらいの入り具合もいいなって。

根建:あぁ、そうだね。確かにそれはそうだわ。

――8月後半に広島、そして最後は大阪ですね。

文田:大阪はなくなっちゃう味園ユニバースでやるんですけど、人数があまり入れられないので2公演にして。どっちもネタ変えようと思ってるので、見に来てほしいですね。

根建:味園ユニバースでライブが見られる機会もなかなかないので、来てほしいです。

文田:「ZEKKEI MANZAI」も撮影する予定です。広島はライブの会場は別ですけど、絶景漫才を撮るために木下サーカスのテントを借りられたんです。

――すごい。借りられるんですね。

根建:ねぇ、びっくりしますよね。

文田:BOSS(注:担当マネージャー)が動いてくれて、スケジュール的にハマったのが広島だったんです。だから、広島だけ広島である必要はない感じなんですけど(笑)、こっちも見に来てほしいですね。

ツアーの最後、本当は大阪じゃなくて、僕が生まれ育った団地でやりたかったんです。昔はめちゃくちゃ活気があって、子どもだちも多かったんですけど、今は平均年齢60歳を超えちゃってて。そこで撮りたいなと思ってたんですけど、断られました。

――(笑)。「ZEKKEI MANZAI」から冠番組ができたり、いろいろと広がっていますね。

根建:ありがたいことに、いろんなことをやらせてもらってます。

文田:(コンテンツとしては)そんなに人気はないんですけど、同業者の方が面白いと言ってくれてるのはうれしいです。だから、同業者に配ってる(自己紹介用の)パンフレットみたいだなとは思ってます。

自由に作りすぎた新ネタでスベった

――漫才という軸があっての広がりだと思いますが、今、新ネタはどれくらいのペースで作られてるんですか?

文田:昔に比べて作る本数はだいぶ減りました。

根建:単独ライブ前に作るくらいですね。

文田:今のツアー中でも、新ネタができたらやったりしてるんですけど、あれは新ネタと呼べるレベルなのか…(笑)。新潟のオープニングに新ネタやったら、死ぬほどスベったんです。めちゃくちゃ下ネタで。あぁ、そうか。地元の方が見に来てくれてるんだって、そこでわかったんですけど。

根建:やばかったなぁ、あれ。完全にミスりました。

――ネタの作り方に変化はありますか?  文田さんが土台を作って、二人で話し合いながら作っていかれるのは変わらずなのかなと思いますけれど。

文田:そうですね。ただ、前よりもっと緩くなってるというか。前までのネタがプリンだとしたら、ちょっと柔らかめのプリンになって、今は液体化してます。

根建:プリンでもない感じ?

文田:そうそう。冷蔵庫に入れる前みたいな感じ。緩いって、そもそも固いことがベースにあるじゃないですか。僕らの場合はベースが緩くて、ちょっとだけ固まればいいのかなって思うくらいだったものが、液体になってる。だから激ゆるですけど、賞レースもないので。『THE SECOND~漫才トーナメント~』はありますけど、その年に作ったネタで勝負って感じでもないじゃないですか。

根建:『M-1』終わってからは、わりと自由だよな。

文田:漫才師としてのニンもついたので、汚い言葉遣いや下ネタ、悪口とかも含めて好きにやれるというか。え?っていうハレーションを起こすことはなくなってきましたね。けど、ルミネ(theよしもと)の寄席では、たまに失敗してスベります。

根建:全然余裕でありますね。

文田:一見さんの老若男女に、気持ちよく笑って帰ってもらえるようなネタがあんまりないんで。あるにはあるけど、そのネタばかりやり続けるのも……。

そういうネタをやったとき、普段からよく見に来てくれているお客さんの顔が(客席に)見えると、申し訳ない気持ちになっちゃうんですよね。だから、よく見に来てくれるお客さんには「寄席に来ないでくれ」と言ってるんですよ(笑)。で、じゃあ、次の公演はネタ変えようってやったら、変な空気になっちゃったりして。

囲碁将棋さんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2024年9月号』に全文掲載されています。