10月14日(月)「候補その5 広尾の古民家」

「ピザ屋の2階」に決められず、落ち込んでいると、一発逆転ホームラン、最高のおもしろ物件情報が舞い込んできた。広尾駅徒歩2分の2階建ての「古民家」。まさかの一戸建て! 僕は心が踊った。

「古民家を事務所にしています」はオシャレすぎる。2階を職場にして、1階を荷物置き兼応接間にしよう。なんなら、イベントや撮影だってできちゃうかもしれない。若手芸人を泊まらせたっていい。夢の「TPコーハウス」だ。

すぐ内見予約をして、現地へ向かった。『ドラえもん』の野比家や『サザエさん』の磯野家を思わせる「いわゆる昭和の一軒家」の外観にテンションが上がる。

「ガラガラガラ」

どこか懐かしい引き戸玄関を開けると、僕は愕然とした。

▲内装ができあがっていない物件を一応チェックするTP

内装が何もできあがっていなかったのだ。信じられない。確かに、不動産会社の人は「お客様が自由にカスタムできる物件」と言っていたが、これはカスタムではなくリフォームじゃないか……。完成まで半年くらいかかりそうだし、お金もいくらかかるか、見当もつかなかった。当然アウト、断るとかそういう次元じゃない、だって完成してないんだもの。

「TPコーハウス」の夢はあっけなく終わった。

10月15日(火)事務所、決まる

もういい加減「ヘンテコ物件大喜利」のパターンも出尽くしただろう。どの物件もネタになるから、この連載的にはありがたいのだが、このままでは物件探しの連載になってしまう。いい加減早く決めたい、と焦っていると、またひとつ物件情報が届いた。

自宅からかなり近い、マンション1階の1LDK、家賃もそこそこ、目の前が私道になっているので、車を停めての荷物搬入出もしやすい……いい物件なのに、ここまで色んなヘンテコ物件を見てきたせいで「物足りない」と思ってしまった、なんだかちょっと面白くない。

いや待て待て、そもそも物件なんて面白くなくていいのだ。加点ポイントが少なくたって、減点がなければいいのだ。「M-1グランプリ」だったら、審査員全員が90点をつけるような物件。確かに優勝はできないけど、毎日、そして末永く通う事務所は、それでいいのだ。立川志らく師匠が99点をつけるような奇抜物件には入居したくない。

というわけで、何も欠点がないプレーンなこちらの物件に決定!!