春の風物詩である高校野球センバツ大会が始まり、プロ野球も開幕が刻一刻と近づくなど球春到来の雰囲気がただよっています。大谷翔平選手や鈴木誠也選手といったメジャーリーガーたちが東京で開幕戦を行って盛り上がりを見せていますが、アメリカのアマチュア野球を盛り上げている団体をご存じでしょうか。その名はPerfect Game USA(以降PGUSA)。いったいどんな団体なのか、紐解いていきましょう。

アメリカのアマチュア野球の成長に貢献する民間企業

今、日本ではかつてないレベルの野球フィーバーが起きています。大谷翔平選手、山本由伸投手、佐々木朗希投手が所属するロサンゼルス・ドジャースと今永昇太投手、鈴木誠也選手が所属するシカゴ・カブスが東京で開幕戦を迎え、野球の試合以上のお祭りのような盛り上がりを魅せた「MLB Tokyo Series」。

そして関西に目を向けると、現在兵庫にて第97回高校野球センバツ大会(春の甲子園)が開催中ですが、毎年熱戦が繰り広げられ、全国TV、メディアに幾度となく取り上げられています。

日本に住んでいる方からすると、この甲子園大会は春・夏の風物詩ではありますが、改めて世界へ目を向けると、高校生の大会がこれだけ全国メディアに取り上げられることは他国ではなかなかありません。これは如何にすごいことか。日本特有の文化であり、他ではなかなか再現し難いことでしょう。

その中、アメリカで似たようにアマチュア野球を盛り上げている団体をご存じでしょうか。その名はPerfect Game USA(以降PGUSA)。1990年代中盤に創設された民間企業で、アメリカのアマチュア野球の成長に貢献した功労者と言えるでしょう。

PGUSAは主事業として大会やイベントの運営を手がけ、中高生球児がMLBや大学などの学生野球プログラムのスカウトへアピールの場を提供しています。全国大会のみならず、地域大会や強豪間の単発試合、そして試合形式を取らず、選手の打撃・投球・守備スキルを様々な形で披露するショーケースも手がけ、活動の幅はかなり広く持っています。

また、これらのイベントの映像や結果、各選手の成績などをホームページにてデータベース化し、PGUSA独自の評価・ランキング、そして講評の記事等も掲載していたり、全国の球児の可視化に携わっています。

今やMLBドラフトで上位指名を受ける選手に数多くのPGUSAイベント出身者が名を連ね、PGUSAイベントでの出来が直接ドラフト評価に繋がるといっても過言ではありません。

実際2003年以降、PGUSAイベント参加者15,000人以上がMLBドラフトにかかり、そのうち2,200人以上がMLBにてプレーを果たしており、年々増加中です。

直近では、昨年ア・リーグMVP2位を飾ったボビー・ウィットJr選手(カンザスシティ・ロイヤルズ)が数多くのPGUSAイベントを経て評価を大幅に上げ、PGUSAの高校生ランキングにて1位に表彰された後、2019年ドラフトにてロイヤルズから全体2位指名を勝ち取りました。

▲PGUSAから夢のメジャーリーガーになった選手たちが年々増えている

アマチュア野球の成長を手助けすることにより、MLBの質向上を促しているといえるでしょう。

そして近年では更に自身の開催したイベントを中心にコンテンツ創作・展開を担うメディア事業も有します。テレビや自身のオンライン配信プラットフォーム「Perfect Game TV」にて主催試合を放送し、さらにアマチュア野球に焦点を充てた番組やポッドキャストなど様々な独自コンテンツを加え、24時間放送を提供しています。

直近ではSNSにもかなり力を入れており、有望球児に密着した短時間のコンテンツ(「〇〇選手の一日」など)を手掛けたりもしています。

若年層の球児向けにテイラーメイドで作ってきた結果、現在インスタグラムではフォロワー64万人、TikTok、YouTube、X(旧Twitter)などにおいても強固なファンベースを築けています。

これらの努力が功を奏し、PGUSAはビジネスとしての評価も上がっています。去年には20人の現役、ないしは元メジャーリーガーが投資家として参画を発表し、中には殿堂入りクローザーのトレバー・ホフマン選手、先日の東京シリーズでドジャースのショートを務めたミゲル・ロハス選手、現千葉ロッテマリーンズのグレゴリー・ポランコ選手など著名な方も含まれています。

上場企業ではないので具体的な財務情報は見られないものの、爆発的に成長中のイベント数や各メディアコンテンツの視聴者数を見るには相当好調と言えるのではないでしょうか。

そんな絶好調なPGUSAですが、近年は米国外にも目を向けており、実は今年、ついに日本にも上陸します。夏に東京と札幌でイベントを開催予定で、アメリカと日本の球児の対決・交流をセッティング予定です。日本人が大好きな高校野球に国際交流を取り込むことで、どのような面白いものが生み出されるか、筆者としてはとても楽しみです。

さて、今回の記事はPGUSAの概要についてお話をしましたが、次回記事ではMLB.TVを運営するMLB Advanced MediaやMLB専門テレビチャンネルMLB Networkのプロデューサーを歴任し、現在PGUSAのメディアプロダクション責任者を務めるJim Jenks氏のお話を伺いたいと思います。

是非お楽しみにしていただけますと幸いです。