ん? ちょっと、なんか、やる気出てきたかも?

となると、やっぱり次に目を向けるべきなのは……運動か。

しかし……私は、小さい頃から大の運動音痴。

「ボールは友達。こわくないよ」とあるサッカー少年の言葉だ。

いや、お前友達を蹴りたおしてんじゃねーか。

そんなツッコミもろともせず、彼はボールを友達と言い張る。

が、私にとって

 

もはや向かってくるだけで恐ろしい。

それほどに、私は運動が苦手なのだ。

そんな私だが、少し前に友人・モッちゃんとジムに行き、ウエイトトレーニングに触れた。絶対できないと思っていたのだけど、意外となんだかんだそれなりにできたことに驚いた私。(第11話・第12話参照)

あれから数回、モッちゃんに誘われてジムに行ってはいるが、そんな週に何回もというような頻度ではない。

モッちゃんとだからなんだかんだ楽しく出来てはいるが、正直一人なら絶対やろうとは思わない。

でも、1ヶ月に2キロ痩せられたら、あと2ヶ月半で目標達成できるというのは正直めちゃくちゃ魅力的……

んーどうするべきか……。と思い悩んでいる私に、すぐ仕事を振ってくるボール(女上司)が近寄ってきた!

「ちょっといい?」

「よくねーよ」と、心の中では思いつつも、そんな風に思っていることはおくびにも出さず、とびっきりの笑顔で

「どうしました?」

と返す私。

嫌そうな顔は厳禁。そんな顔をしても私にはなんの得もない。嫌そうな顔で得られるのは上司からの低評価と、やりたくない仕事を振られる可能性が高まることだけ。

どうせ新しい仕事振ってくるんだろ?

いいよいいよ。体重最小値更新したし、今日は気分良く仕事できてるからやってやんよ。

と、思っていると……

「ちょっと相談したいことがあるんだけど。仕事の時間以外で今度時間作ってくれたりしないかな?」

相談?

まあ、いいけど。

え? 仕事の時間以外でってことは仕事以外の相談? 上司が? なんの??

……嫌な予感しかしない。

が、私の頭の中であのサッカー少年がガッツポーズで「上司は友達。こわくないよ!」と、言ってくる。

いや、友達ではないだろ。と思いつつ、まあそんなことはどうでもよくて。

私はひとまず上司に、「もちろん!」と。笑顔で応えた。

上司がよくわからないことを言ってきた時には、とりあえず笑顔。これが私のビジネス処世術だ。

上司は私の返答に笑顔になり、私の側を離れていく。

……あの厳しい女上司が私に相談って……いったい何の……??

え? まさか私クビになる? いやいやいやそれはないそれはない。だって私何もしてないし。まあ心の中では上司を幾度となく殴り蹴りはしてきたけど。え? 心の中もダメですか? 心の中で上司を蹴り飛ばしたらパワハラですか? このご時世、心の中でもコンプラ遵守ですか?

そんな感じで私がしばらく混乱していると、上司からスケジュール合わせのLINEが届く。

「基本こっちがスケジュール合わせるから。いける時あったら教えて」

……優しい。

普段と違い優しすぎることに強烈な違和感を覚えつつも、上司とスケジュールを合わせ、ご飯にいくことに。

上司から続けて「なにか食べたいものある? リクエスト何でも応えるよ!」と届く。

え? 怖い怖い怖い! 優しすぎる! え? マジでなに?? 怖すぎるんだけど……。

「上司は友達。こわくないよ!」

いや怖ぇよ!! 全然怖ぇよ!!

えー……でも……もし選べるなら……

「和食がいいかもです! お刺身とか食べたいです!」と、とりあえず元気な感じで返信しておいた──。

何かと厳しい女上司からの突然の誘い。それをきっかけに、

私の順調に見えたダイエットは、

大失敗の末路を辿ることに……

なるのだが、続きはまた次回に──

ひとまず、あの優しいLINEの後で、女上司から

「あ、さっき言い忘れたけど、追加で新しい仕事頼みたい」

と来たので、とりあえず私は心の中で、

 

10キロ痩せるまで、あと5.2キロ──