爽快なキャラクター性と盛り上げ力で、メディアでも活躍しているコットン。ツッコミ・西村真二がネタづくりを担当し、憑依型とも評されるボケ・きょんの女性役が光るなど、バランスのよい演技力の高いふたりによるコントに注目が集まっている。

『キングオブコント2022』で準優勝を果たしてメディアなど活躍の場が広がる中でも、ネタに真摯に向き合い続けてきた彼らは現在、全国ツアーの真っ最中。爽やかでポップなイメージの強いふたりだが、話を伺って、貪欲なまでに芸人らしい無骨さを感じるコンビだと改めて感じる。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2025年6月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

ツアーの初日にとんでもないミス

――全国ツアー初回の東京公演を終えた今の気持ちを聞かせて下さい。

西村:想像以上にお客さんが沸いてくれました。今回は普段やらないようなテイストの攻めたネタもあるんですけど、反応がたくさんあって初回としては申し分なかったです。

きょん:会場のニッショーホールは、単独はもちろん寄席でも立ったことがない初めての劇場で。舞台袖がどれくらいの暗さなのかもわからなくて、始まる前はちょっと不安だったんですけど、すごくコントがやりやすくて。ただひとつ。僕、単独の初日にめちゃくちゃ噛んだり、ヤバいって焦ったりすることを起こしやすいんですけど、今回はわりと順調だったんです。

西村:甘噛みこそあったけどね?

きょん:甘噛みは噛んだことに入らないから。なのに、後半にあるネタでとんでもないミスをしてしまって。

西村:二度とないものだと思います。ツアーのラストに東京で凱旋公演をやるんですけど、初回の公演をご覧になった方は、あ、こういうミスがあったよなって思い出して笑っちゃうくらい衝撃的なミスで。

きょん:印象に残ってしまうものだったので、次回の福岡に響かないように気をつけたいです。

西村:ただまぁ僕らの場合、コント中のセリフは6割5分、きょんが喋ってるのでね。

きょん:けど、相方にネタを書いてもらっているので、ちゃんと表現しなきゃなっていう責任感を持ってやってます。

――6月いっぱいまでツアーが続くということは、今年の『キングオブコント』を見据えた新ネタでもあるんですか?

西村:いえ、僕達は単独のネタで『キングオブコント』に臨むことがあんまりないので、やりたいネタをやってる感じです。

――となると、攻めたネタというのはどういう心理が働いてやることになったんですか。

西村:自分で言うのは恥ずかしいことかもしれないですけど、演技が得意なふたりなので、コントはリアルな設定とかストーリー展開の中でドラマティックだったりハートフルだったりと称されることが多いんです。その殻を破るというか。例えば、芸人同士って楽屋でミニコントをやり始めることがあるんですけど、そういうニッチな面白さを出してみようということですね。

きょん:攻めると言っても、人を傷つけるネタではないです。

西村:攻めた感じといっても、僕らのフィルターを通せばマイルドになるものですね。ネタを書き始めるのは2月中旬くらいからなんですけど、それまでに設定の精査をめちゃくちゃやるんです。

――精査というのは?

西村:ストーリーが面白くなるかどうかを判断するということですね。僕、ネタは1本書き終えてから次に取り掛かるんじゃなく、全ネタを途中までマルチで書いていくんです。例えると、種を植えて同時に水をあげて伸ばしていくんですけど、この花咲いても面白くねぇなと思ったら途中で鉢ごと捨てるんです(笑)。1回、きょんに5ページ半の台本を渡したあとにやらないって言ったこともありました。あれ、かわいそうだった!

きょん:おまえがそうしたんだろ(笑)! 台本を覚えてなかったからまだセーフだったけど。

西村:やめるわって伝えたら、きょんは愕然とした顔をするんですけど、優しいから『あ、そうなんだ』って。

きょん:西村単独あるあるですね、『きょん、ごめーん。あれ納得いかないかもしれなーい』ってなるのは。だから、これちょっと怪しいなって思うネタは予想できるようになりました。例えば『ヒルナンデス!』の楽屋で、『いやぁ、あそこの展開がなぁ…』とか言い出した時は1回覚えるのステイしとこうって思ってますね。もちろん何周も考えてくれた上のことなので納得してます。

西村:僕もすぐに対応できる相方だからこそ甘えられるというのもありますね。

僕もきょんも楽屋でやるノリは14年間変わってない

――3カ月にわたってのツアーの中で、披露するネタを変える予定はあるんですか?

西村:各地で変えると思います。というのは、攻めたネタを地方に持っていくのは僕らとしては面白いかもしれないけど、お客さんの満足度が高いかどうかは別だと思うから。東京はお笑いを生で観る機会が多いですけど、地方はそういう機会が圧倒的に少ないぶん、“これって笑っていいのかな?”とか周りの目が気になる部分もあると思うんです。

例えば、石川公演とかは新ネタとベストネタを織り交ぜるのもアリだと思いますし、逆に名古屋はバチバチに攻めようかなと。今回、東京公演以外で即完したのは名古屋。エンタメに前のめりな地域なのでね。

きょん:僕ら界隈で、名古屋はそういうイメージです。

西村:各地でのお客さんの反応も楽しみですし、一緒に巡業していただくと違いがよくわかるかなと思います。見たことあるネタでも、僕らの単独ライブの演出上、見たことない部分が加わるので。今回、東京は1時間45分くらいの公演になったんですけど、その中で僕らが舞台に立ってない時間は10分もないんです。

きょん:僕らの単独ってネタの合間にVTRを挟まず、オリジナルの構成で90分間を駆け抜けるんです。

西村:だから、見たことがあるネタでも前後にエピソードゼロかアフターストーリーかが見られるので新鮮に観られると思います。

――年齢や経験を重ねて、面白いと思う視点に変化はありますか?

西村:意外にも変化はないですね。僕らの場合、置かれている状況の変化が大きいというか。チヤホヤ期もあったし、アイドル期もあったし、ブレイク期もあったし、実力派と呼ばれる時期もあった。それを経て円熟味が出たのかなって。僕もきょんも楽屋でやるノリは14年間変わってない気がします。

きょん:うふふ(と笑いながら頷く)。

西村:そういう意味で、僕らが元々面白いと思っていたものも熟しているのかなと思います。それに、面白いことに出会いたいっていう好奇心はどんどん増してます。やっぱりライブが楽しすぎるんですよね。単独はもちろん普段のコーナーライブも楽しいから。

きょん:そうですね。置かれてる状況もそうですけど、自分の表現の仕方もすごく変わったと思います。芸歴1~3年目って、女性役はザ・女装でしかなかったというか。ただカツラを被って、声をちょっと高くして、スカートをはいて女性を表現するだけだったんです。

けど、『キングオブコント』の決勝に初めて出て女性役を注目していただくようになってから、より女性役を強くしようと決めて。例えば10代なのか20代なのか50代なのかとか、年齢に合わせたしぐさや声色にして思いっきり憑依させる努力をするようになりました。

コットンさんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2025年6月号』に全文掲載されています。