「ええ。大富豪ダイエット です!」
大富豪ダイエットって、まさかここにきて物凄い金を払わされるとかそう言う……
ハッ!! そうか、今、私の中で点と点が線につながった!
伏線が、全て回収された!
だからアツオは私の周りを嗅ぎ回っていたのだ!
私の家まで来ていたのも、全ては私がどれくらいの資産を持っているかを調べに──
「大富豪ってトランプの大富豪??」
「そうです!」
モッちゃんとアツオの冷静なやりとりを聞いて、私の中の伏線回収が全て間違いだと言うことに気が付く。
「ダイエットって、大富豪と同じなんです」
ダイエットに停滞はつきもの。どれだけ上手くやっても、5キロ以上のダイエットを敢行した場合、停滞のタイミングは数回来てしまうもの。
早く痩せたいからと、とにかく強いカードを切りまくってしまうと、
体重が落ちなくなった時に切るカードがなくなってしまう。
だから止まったら、まずは弱めのカードから切っていくのがセオリー。
ダイエットは大富豪と同じ。終盤で強いカードが残っているほど有利に進められる。
「例えば炭水化物を、血糖値を上げにくい、GI値の低いものに変更してみる とか」
血糖値……。
そういえばダイエット始めたての頃、血糖値低けりゃ痩せるって聞いて、
試して太ったことあったな……(第1話参照)。
「それカロリーオーバーしてたからです!
基本のカロリー管理とP・F・C管理ができている今なら効果がある可能性があります!」
可能性って、確実じゃないんかい。
「こればっかりは、人によります。GI値下げるのがすごく効果的な人もいるし、あまり効果が体感できない人もいる。
例えば、食事の前に高カカオチョコレートを5gくらい食べるとかも、血糖値を調整するって言いますけど、僕はあんまり効果を感じられなかったです。相性があると僕は思っています」
なるほど、相性か。
アツオ曰く、色々試してみたらいいとのこと。
身体は人それぞれ違う。だから必要なのは、
自分用のダイエット知識!
自分は「こうすれば無理せずに痩せる」という知識を知っていることが大事。
「知ってるでしょ? ダイエットに一番必要なのは知識だってことを」
確かに。もうそれは痛いほど知っている。
「ダイエットには色んなカードがあります。
けど、今あなたが切るべきカードは間違いなくコレ! ってカードがあります」
おお! なんとそんなものが!
「それは、休むこと です!」
休むこともダイエットカードの重要な一枚。
痩せるのには3つの要素しかない。
“どう動くか”“どう食べるか” そして “どう休むか”
でも……休んで本当に痩せる……?
休んだら太る気しかしないんだけど。
「ダイエットって、休んじゃいけないって印象があるかもしれませんが、
それは大間違いです!! 休まないと痩せません」
身体が疲労していると、省エネモードに入りやすい。
今の私なら、食事はアンダーのままで、身体を休息させるといいとアツオはいう。
「いつも以上にしっかり寝てください。
これは相性とか関係なく、一つ断言できることがあります。間違いなく……
寝る子は痩せます!」
そうアツオに断言され、私は帰ってもう速攻で寝ることにした。
最近激務の影響で体が疲れていることは間違いない。寝れるなら寝たい。寝て痩せるならなおのこと寝たい。
が、寝て痩せるとかやっぱりあんまり信じられない……。
正直痩せる期待は全くしていない。が、アツオが言うなら今までの実績を踏まえて信じてみよう。てかもうマジで寝たいし。
と、寝まくったところ……
翌日──
10キロ痩せるまで、あと1.9キロ──
キターーー!! 最小値更新!!
一気にガクンと落ちたーー!!
今までにも何度かこうしてガクンと落ちるタイミングはあったし、
こういう時はほとんどが水分で、脂肪が落ちたわけじゃないということは理解もしてる。
でも、それでもガクンと数字が落ちるのは嬉しい!!
めっちゃ寝れたし、体重も落ちたし、
アツオーー!! さすがーー!! あんた神だよ、仏だよーー!!
そして、そんなハッピーな中、もう一つ全く期待していなかったハッピーが舞い込んできた。
例の総務からだ。総務からお返事のメールが来たのだ。
メールの内容を簡単にいうと、「大変な思いさせてごめんね! 今、人雇う準備してるところっす! 負担が軽くなるようにすっから、人雇えるまでもうちょっとだけ待って。ほんとごめんね!」とのこと。
全く期待してなかったのに、ダイエットもいい方向に進んで、職場もいい方向に進んで、まさに願ったり叶ったり!
神さま、仏さま、アツオさま!
もう、なんだか全てがアツオのおかげに思えた。
今すぐアツオに感謝を伝えたい!
けど──……

やっぱり頭に浮かぶのはあの時の光景……。
いや! でも!
これは、さすがにお礼を言うべきだ。全てアツオのおかげなんだから。(総務の件はアツオ全然関係ないけど)