色々モヤモヤすることはある。けど、
アツオのおかげで、着実に目標に近づいている。
モヤモヤしてるからってお礼も言わないのは、私の中ではなしだ。
社会人として、私が望んで何かをしてもらったのにお礼も言えない人間ではいたくない。
失礼な人には、悪いことが起こるんだよって昔おばあちゃんが言ってた。
総務にお礼のメールするの忘れてたのを今思い出したけど。
……よし、ここは電話にしよう。アツオにお礼の電話をしよう。
なんなら流れで、「あの時私のこと見てたっしょー? あれなんだったのー??」なんて軽いノリで聞いてみたらいいんだ。
私はアツオがどうしても変なヤツには思えない。
モヤモヤを放置するくらいなら、いっそ聞いてみるべきだ!
と、私はラインで「ちょっと今電話していいっすか?」とアツオに送り、OKの返事が返ってきたので電話をかけてみた。
電話でアツオに、休むのがばっちりハマって最小値を更新できたことを伝えると、アツオは我が事のように喜んでくれた。
そして、次なるダイエットカードの指南までしてくれたのだ。
……やっぱりこんな良いヤツ、変な人なわけがない。
「どうしました?」
私が少し黙っていたのを不思議がってアツオが聞いてきた。
「あの、ですね……?」
き、緊張する!!
「あなたストーカーですか?」
なんて聞けるわけもない!
かと言って、さっき想像したみたいな軽いノリはやっぱり私には無理だ!
無理なら最初から想像するなよ! いや自分で自分にツッコミ入れてる場合じゃないぞ!
えっと、な、なんて言えば……
そうだ!
「あのですね、私たちって、ちょっと前にモッちゃんに紹介してもらった喫茶店で、
初めて、会ったんだよね……?」
すると……
アツオは少し黙り込む。
いやいやいや、やめてやめてやめて、黙り込まないでよーー!!
「会ったの、初めてじゃないっすね。実は……前にも会ってます」
ま
じ
か
すると、アツオが意を決したように
「実は……実は俺!!」
「ごめん! やっぱり大丈夫!!」
「え……?」
「いやいや、ね? いつ会ったとかね、関係ないよねー。今の関係が大事じゃないすか! ダイエットの師匠と弟子! ね! 私たちの関係はそれでOK!」
「……はい。それで良ければ」
あぶなーー!!!
今危うく告白されるところだった!?
いやいや、アツオがいやだとかそういうのではないんですよ。
ただ今は、恋愛とかなんかそういう気分では一切、全く、これっぽっちもないんですよ。
別に何があったとかそういうわけじゃない。
別に誰かに振られたわけでもないし、何かに絶望したというわけでもない。
ただただ単純に、今は一人が楽なんで!
だからほんとアツオが良いとか悪いとかそんなんじゃなく、
ただ単純に、恋愛とか今は大丈夫っす!! って話なんす!!
いや、なんで私はこんな動揺しとるんだ!!
と、その時──
社用のスマホが鳴った。
「アツオ、ごめん! 仕事の電話きちゃった。また連絡します」
「あ、はい。なんかあったらいつでも」
ちょうどよかった。
でも……なんだろう。なんか申し訳ないというか、あんなに良くしてもらったのに、
こんな切り方、失礼だっただろうか……。
あ、会社の電話出なきゃ。
と、私は社用の電話に出た。
……うん。やっぱり失礼な人には、悪いことが起こるんだね。おばあちゃん。
会社からの電話の内容を簡単に言うと、
「忙しいところ悪いけど、新人雇用することになったから雇用面接をお願い」
とのこと。
つまり、
総務「仕事し過ぎてない? 休んで」→私「人少ないから仕事休めない」→総務「人増やすよ」→私「やったー!」→上司「人増やすから雇用面接して」
結局仕事増えとるがな、ちくしょう。
10キロ痩せるまで、あと1.9キロ──
(第24話につづく……2025年6月5日公開予定)
※本記事は、WANI BOOKOUTにて公開された記事を再掲載したものです。