今日5月13日はジャンボ鶴田の命日となる。今なお伝説として語り継がれるジャンボ鶴田と長州力のたった一度のシングルマッチの背景を探る。

長州力への感情を露わにした鶴田

▲長州力がジャパン・プロレスに移籍する前から、ふたりの対決は渇望されていた

全日本VSジャパン対抗戦で活気付いた85年の全日本マットにあって、鶴田VS長州のエース同士の頂上決戦の気運が一向に盛り上がらない中、アクションを起こしたのは意外にも鶴田のほうだった。

5月9日、キャピトル東急ホテル『日光の間』で6月シリーズと、全日本&ジャパン提携1周年興行となる6月21日の日本武道館大会の主要カードの発表記者会見が全日本の馬場会長、ジャパンの大塚社長、両団体主力選手出席のもとに行われたが、ここで鶴田が不満を漏らしたのである。

6・21日本武道館のカードは馬場VSラッシャー木村のPWFヘビー級戦、天龍VS長州の再戦、タイガーマスクVS小林の3大マッチが柱で、鶴田は石川敬士、大熊元司とトリオを組んでのカーン&谷津&浜口との6人タッグマッチが組まれた。

このマッチメークについて聞かれた鶴田は、「自分だけがなぜ6人タッグなのか……正直言って不本意ですね。どうせだったら天龍選手のように、長州やカーンとシングルをやってみたいです」とキッパリと言ったのだ。これを聞いていた長州は、「おい、いい加減にしろよ! 一方的に言いたいことを言いやがって。勘違いするんじゃない。お前はいつでも楽な立場に立って、俺たちに胸を貸しているとでも思ってるのかよ!? ふざけんな、いつでも五分の戦いをやってんだぞ、俺たちは! 本気なら俺との一騎打ちを代表(馬場)に頼めばいいだろう」と鶴田に食ってかかった。長州は常に感じていた全日本と鶴田の格上意識に怒りを爆発させたのだ。

この後、両者は立ち上がって睨み合い、ついに乱闘に発展。長州は「こんなふざけた会見があるか!? 武道館のカードは白紙だ!」と会見場をあとにしてしまった。この直後、ロビーのティーラウンジで改めて鶴田に個人的に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「正直な話、ムシャクシャしていたというか、今日も記者会見にあまり来たくなかったんだよ。まあ、馬場さんが決めたカードだし、今までも馬場さんを信じてやってきたし“何か、このカードの中にも含みがあるのでは?”と思う一方で“自分はあまり重要視されていないんじゃないか!?”っていう疑惑があったのも事実。僕自身、基本的には来日してくる世界のトップ連中と戦うのが役目だと思っていたし、会社や馬場さんの考えもそうだった。それに源ちゃんが長州戦に燃えていたから、そこに割り込んでいくのは乱入と同じで失礼だと思ってた。でも、もう冗談じゃない。やってやりますよ!」