新型コロナウイルスの影響で自粛生活が続くなか、何をして過ごすべきか。今年の3月に東大を卒業し、現在TVや舞台で活躍中の木瀬哲弥氏に、今こそおすすめの過ごし方を聞いてみました。

時間のある今こそ「蓄え」を増やせ

新型コロナウイルスの影響で自粛生活が続き、突然生活がガラッと変わってしまったという人も多いと思います。こんなときに僕が思い出すのが、高校のときの剣道部顧問の「自分の中にカードを蓄えろ」という言葉です。

剣道の試合って一瞬で決まるんです。相手が少し剣先を外した時、前後に揺れる癖、目を閉じる一瞬、そういうものを捕らえて即座に動かなければいけない。その時々に考えていては間に合わないから、普段の稽古のなかでカード (切り札) を増やしておくんだと言われていました。

この先生の言葉は、部活の稽古だけでなく人生の様々な場面でも、僕の人生に響いています。東大を志したのも、勉強できることの幅が広く色々な人がいるので、人生の蓄えが得られるのではないかと考えたから。他の道にはない知識や経験を得たり、飛び抜けた人々と出会うことができるのではないかと期待していましたし、実際そうでした。

柄にもなくミスターコンテストに出場したのも、それまでの自分では見ることのない景色が人生の蓄えになるのではないかと思ったからです。

思えば僕のこれまでの行動の根っこには顧問の言葉がいつもありました。

そんな言葉を思い出し、普段通りの生活ができない今こそ、自分の中に蓄えを増やすチャンスにするべきなのかなと考えています。普段は取ることのできないまとまった時間で手に入れた知識や経験が、いつか激動の時代を生き抜く切り札になるかもしれませんよ!

映画鑑賞を歴史の勉強に役立てる

蓄えを増やすといっても何をしたらいいか悩む方もいるのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが、映画鑑賞です。大学在学中は暇な時間があればNetflixやPrimeビデオを開く生活で、年間300本くらいのペースで鑑賞していました。

この記事では映画は単なるエンターテイメントにとどまらず、鑑賞の仕方次第で人生に大きな蓄えを与えてくれるということをお伝えしたいと思います! 僕の場合は大学の勉強に、ひいてはグローバルな価値観を身に付けることに役立ったなと感じていて、そのことを例に挙げてお話してみようと思います。

僕は工学部建築学科で西洋建築史を専攻していました。高校では理系だったので歴史の授業はなく、大学に入ってから中学以来の歴史の勉強を始めました。

近頃は読みやすい本やYouTube授業などもあり、知識を収集するのにとてもいい環境が整っているなあと感じました。しかし特に大きな気づきは、映画を趣味にしていたことが歴史の勉強に役立ったなということでした。

そもそも歴史を学ぶっていうのはどういうことでしょう? 何年何月に何という事件が起きたという知識を覚えていくことでしょうか? それだけでは表面的な記憶にすぎず、テストが終わればすぐに忘れてしまうし、そもそも暗記みたいでつまらないですよね。

映画は物語的に歴史を語ってくれます。面白いストーリーや感動的な結末は印象に残りやすく、きっといつになっても頭の中に残り続けるでしょう。そして何より、物語は単なる事実だけでなく時代の雰囲気や情緒を感覚的に教えてくれます。それは文字だけでは伝わることのないものだと思います。それに好きな映画で描かれた出来事はもっと知りたいと思うので、勉強するモチベーションにもなりました。

しかし歴史を勉強しはじめて最も役立ったのは、映画の物語だけでなく「いつ誰によって」「なぜ撮影されたか」そして映画の中で歴史が「どのように描かれているか」といった製作背景に注目することで得られるものだと気がつきました。

歴史を学ぶうえで大事な姿勢は、事実を暗記するだけでなく、「もっと知りたい」と思い続けること。優れた映画はその道標になることでしょう!

ここからは特に現代を味わうことのできる映画を、具体的な作品を挙げながら3つのテーマに分けてご紹介したいと思います!