中国で感動した漬物鍋「マンハングオ」

中国ではかなり古い時代から漬物〔中国語で「醃菜(イェヌツァイ」〕が食べられてきた。文献上、最初に漬物の記述がみられるのは、6世紀半ば頃に著された中国の農書『斉民要術』で、塩漬けや酢漬け、醬油漬け、酒漬け、味噌漬け、糠 (粕)漬け、麴漬けなど、当時すでにさまざまな漬物が顔を揃えていたことがわかる。

多民族国家だから、それぞれ固有の漬物をもっており、調理法も多彩なので、現在でもじつに幅広いつくり方や食べ方がなされている。

私が中国の漬物料理の中で、最も感動したのは「満漢鍋(マンハングオ)」だ。これはもともと歴史的に対立することの多かった満州族と漢族が、鍋の中にひとつとなって友好関係を築こうという意向から、考案されたものらしい。

大きな鍋にハクサイの塩漬けを二つ割り(または四つ割り)にして入れて、そこにハクサイの漬け汁を注ぎ込み、竹串に刺した豚肉、イカ、エビ、ギンナン、豆腐などと一緒に煮込んだ料理である。

発酵したハクサイと漬け汁由来の酸味とうまみ、そして具材の味も加わって、とてもうまい鍋料理だった。もちろん、発酵臭もすばらしく、箸がどんどん進んだ次第である。

これはちょっとスピンオフ的な漬物料理だが、中国のくさい漬物としては、やはり乳酸発酵させてつくるものがおすすめである。

韓国の食卓には必ずあるキムチ

私はこれまで幾度となく韓国を訪れ、歴史と伝統に根づいたさまざまな食文化にふれてきた。なかでも印象的なのは、どこへ行ってもキムチの出ない食卓はなく、キムチの材料は一年を通して市場にあふれていた。

とくにペチュキムチの主材料であるハクサイが収穫され、いよいよペチュキムチを漬ける時期が到来すると、韓国全土は「キムチ騒がせ」といった状態に陥る。

大都市の路上はもちろん、地方の村々の路上に至るまでトウガラシやニンニクの青空市が立って大変な賑わいとなるのである。その光景はじつにダイナミックだ。大きな袋にぎっしり詰められたトウガラシやニンニクが何袋単位で動いていく。

また、釜山(プサン)市や木浦(モッポ)市のような港町では、いたるところにドラム缶に仕込んだ小魚の魚醬や蝦醬(アミ醬油)、イカの醬、殻をむいた貝類の醬などが並べられ、どれも数十キロ単位で各地へどんどん出荷されていた。

以前、木浦市や 廣川(クァンチョン)市でその何種類かを味見させてもらったところ、きわめて塩の強いものであったが、うまみが飛び抜けて深く、ドラム缶によって味と香りがすべて異なっていた。どの魚醬を選ぶかはお好み次第というわけである。

▲韓国の食卓には必ずあるキムチ イメージ:PIXTA

韓国の人は1日平均200グラムのキムチを食べるといわれ、まさに国民食といった感がある。