韓国と日本のキムチは違う

ちなみに、韓国で食べられているキムチと、日本で市販されているキムチでは、風味に大きな違いがある。

韓国のキムチは塩分が少なくて酸味がしっかりついている。それもどぎつい辛さや酸っぱさでなく、熟れて角のとれたまろやかな辛さと酸味である。

これに対して、日本製のキムチの多くはしょっぱさがまず舌を刺激し、しつこくて品のないうまみがあって、酸味はあまり感じない。そして最大の違いはトウガラシの辛さだ。韓国のキムチは辛いというより、コクのあるうまみと辛さがじつに舌に心地いい。一方、日本のキムチの多くは只々激辛なのである。

両者の違いは何に由来するのか。韓国でつくられている本物のキムチは、短期間で大量生産できるものではない。キムチをつくるのに何ヵ月も前から準備し、材料の野菜や香辛料、塩までも、各家庭でつくっていたりするのである。

厳選した材料を秘伝の方法で漬け込み、そのあとも細心の注意を払いながら発酵状態を管理して、ていねいにつくり上げていく。キムチに対する愛情がハンパではないのだ。

ところが、日本では化学調味料や色素などを加えた、発酵をほとんどしていない即席の「キムチもどき」が多く出回っている。これでは本来のうまみや風味は生まれない。なにより、朝鮮半島の重要な食文化にもっと敬意を払って正しく伝えることが大切ではないだろうか。

なお、キムチは2013年12月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録さ れたので、日本ではいい加減なキムチはつくることはできなくなってくる。

「まいにち発酵」連載中!

「まいにち発酵」と銘打って、くさいにおいを宿しているが、それが魅力でもある“魚醤(ぎょしょう)”と“チーズ”を1日1つ紹介してきたが、明日からは“漬物”編をお届けします。なお、それぞれの食品の「くささ」の度合いについては、小泉教授に星の数で五段階評価してもらったので、お楽しみに。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。