もう「テレワーク」は避けて通れない。外資系IT企業で20年以上前からテレワーカーとして実績をあげてきた片桐あい氏が、テレワークの基本から実践メソッドまでを教えます。

※本記事は、片桐愛:著『これからのテレワーク  新しい時代の働き方の教科書』(自由国民社:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

日本版「テレワーク3.0」の幕が開けた

「この会社どうなってるの?隣の席に座っているのに、なんで、メールで会話するんだろう?おかしいんじゃないの?私、やっていけるかな?」

というのが、転職して初出社の日に思った率直な感想でした。

1992年、外資系IT企業サン・マイクロシステムズ株式会社〔現在は株式会社日本オラクル〕に入社し、サポート部門にあるアンサーセンターという技術的なサポートを電話やメールでする、いわゆるコールセンターに私は配属されました。

そこでは、時差のあるアメリカ本社との電話会議に自宅から夜中でも参加するマネージャや、夜間のシステム対応を自宅で行い、翌日は在宅勤務にするというエンジニアがいました。当時から、テレワークを実施していた人々がいたのです。

当時の電話とメールを使って仕事をしている時代を、「テレワーク1.0」とします。

その後も、未就学児を持つ社員のために、申請すればテレワークを認められるという制度も、20年以上前から導入されていました。

その後、2005年にアジアでの鳥インフルエンザの流行や、2001年のアメリカのテロ、または自然災害などの非常時にも、業継続計画(Business Continuity Plan)の観点でも、在宅で仕事をすることが当たり前の環境となりました。

そのような環境で23年間働いてきて得たことは、「どこにいても、どんな方法でも、仕事ができる人はできる」ということです。

一般的にもインターネットが普及し、通信回線も整い、WebやチャットやSNSが爆発的に広がったことにより、今のネット社会ができあがってきました。今、こうしてパソコンやスマホがあれば仕事ができる環境は、技術的には整っています。

▲日本版「テレワーク3.0」の幕が開けた イメージ:PIXTA

例えば、営業がオフィスには寄らずに、社内インフラにアクセスして、オフィスにいるのと同じような仕事ができる環境も整ってきました。これが、「テレワーク2.0」です。

ところが、日本の名だたる企業でも、今回のコロナウイルス対策として「テレワーク」を推奨されても、実際にはどうしたらいいのか? 何から始めればいいのか? 雇う側も雇われる側も不安がいっぱいという状況を見聞きしています。それが、今までのテレワーク2・0の限界でした。

利用する気になればテレワークを運用する技術的なハード面は整っているのですが、それを運用する人の気持ちやルールなどのソフト面が整っていないという格差があるのです。

今回のコロナウイルスによる影響で強制的にテレワークを実践する時期に入った今こそが、「テレワーク3.0」の幕開けと言えるでしょう。

テレワーク=セルフマネジメント

今、この変化についていけないと、仕事のスキルアップは望めないかもしれません。

オフィスワークの話ですが、極端なことを言うと、「テレワークができない人」は、「仕事ができない人」だというレッテルを貼られる場合もあるでしょう。

なぜなら、上司や同僚と物理的に近くにいたらできていたことが、離れてしまった途端にできなくなってしまう。

その解決策を自分で考え、解決のための提案ができなければ、セルフマネジメントができない人、コミュニケーションが取れない人、成果を見せられない人だと思われても仕方ないからです。

▲テレワーク=セルフマネジメント イメージ:PIXTA

そして、今までの日本企業で求められてきたものが、アフターコロナで大きく変わる可能性があります。

組織の在り方や雇用のされ方なども変わってくる時代の波で生き残るためには、「テレワークでも仕事ができること」が、ビジネスマンにとって大きな武器となるでしょう。

テレワークで成果が出せる人は、どんな環境の中でも仕事で成果が出せる人なのです。