紀元前ギリシャの「ムジーケ」が語源

ミュージックの語源はギリシャ語のムジーケである。世界の文化を比較して、建築、美術、文学、料理などだいたい世界各国にいいものがあるものだが、音楽についてはどうも西洋音楽の優位が圧倒的なように思える。

どうしてか考えてみると、グレゴリオ聖歌のころから楽譜があり、再現性が高かったということのようだ。

数学などが盛んだったのも理論的分析を可能にしたのだろう。もうひとつは、教会が音楽を大事にし、また、教会の建築が和声を発展させるのにふさわしかったということもありそうだ。1オクターブを12に分割する音律が他民族の音楽にも応用できるとか、ハーモニーの妙味がほかの地域の音楽に比べてずば抜けて発展したということもできよう。

楽譜は再現するのに役立つ ▲イメージ:PIXTA

音楽はすでにメソポタミアの人々の生活のなかにあったことは遺跡のレリーフにハープやリラ、笛、太鼓などを演奏している姿があることからわかっている。エジプトでも同様で、象形(しょうけい)文字による楽譜のようなものも発見されている。

ギリシャでは、紀元前10世紀ごろから盛んで、教育でも哲学や文学、それにスポーツとともに重んじられていた。音楽の理論的研究も行われ、音階やリズムの種類も体系立てられた。ギリシャ演劇には合唱隊がついたのだが、これを再現しようという運動からオペラが誕生した。

▲オペラの観客席 イメージ:PIXTA

ローマ時代になると、教会では神に祈ったり神をほめ称えたりするために歌をうたうようになった。そして、6世紀の終わりごろには、ローマ教皇グレゴリウス1世が、統一的な聖歌集をつくった。『グレゴリオ聖歌』の誕生で、いまも歌われている。さらに、だんだん楽譜が進化し、そして9世紀になるとハーモニーが登場した。

その一方、俗世界では南フランスのトルバドゥールという吟遊詩人が現れて貴婦人たちに恋の歌を聴かせ、ドイツではもう少し地味で重々しいミンネゼンガーが現れた。マイスタージンガーもこの時代で、リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』でよく知られている。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。