古代から近代へと続くオリンピック
近代オリンピック(夏季)は、1896年に第1回大会がアテネで開かれた。2021年の東京大会は第32回であるが、1916年の第6回、1940年の第12回、1944年の第13回は世界大戦のために中止されているので、実質的には第29回ということになる。2024年はパリ、2028年はロサンゼルスでの開催がすでに決まっている。
近代オリンピックの前身は、古代ギリシャのオリンピア〔最近ではクルーズ船で訪れる人が多い〕で行われていた古代オリンピックである。始まったのは、紀元前9世紀ごろであり、西暦392年にテオドシウス帝がキリスト教を国教としたのを受けて393年の第293回大会を最後に中断された。
このときの競技としては、約191mの徒競走が第1回から行われた種目だが、五種競技もあって、短距離走、幅跳び、円盤投げ、やり投げ、レスリングから成っており、これらが人気競技だったことがわかる。
近代オリンピックは、フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で始まった。1892年にソルボンヌ大学でオリンピック復興の構想を明らかにし、それが4年後にアテネでの第1回大会に結実した。以下、各大会の概要を紹介する。
第1回 アテネ(ギリシャ/1896年)……大会参加者は男子のみ。近代オリンピック最初の競技は陸上の100mで、アメリカのジェームズ・コノリーが、ほかの国の選手がしなかったクラウチングスタートをして差をつけた。マラソンは、ギリシャのスピリドン・ルイスが優勝した。この大会のために作曲された『オリンピック讃歌(さんか)』は東京大会で復活した。
第2回 パリ(フランス/1900年)……ギリシャは恒久開催を主張したが持ち回りに。ただし、万国博覧会の附属大会として5カ月にわたって開かれた。ハトを標的にした射撃、凧揚(たこあげ)、魚釣りなども。英国のシャーロット・クーパーが、女子テニスのシングルスで近代オリンピックの女子金メダリスト第1号となった。
第3回 セントルイス(アメリカ/1904年)……これも万国博覧会の附属大会だった。ヨーロッパの参加国は少なく、91種目中42種目でアメリカだけが参加した。マラソンで途中で自動車に乗った「キセルマラソン」事件が知られる。
第4回 ロンドン(英国/1908年)……ローマでの開催が予定されていたが、ヴェスヴィオ山の噴火などでロンドンになった。個人参加から各国のオリンピック委員会を通じての参加となった。マラソンでイタリア選手ドランド・ピエトリは、競技場のゴール直前で倒れて役員の助けでゴールしたが失格とされた。
※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。