本当の「世界三大料理」とは何か

フランス料理、中華料理、トルコ料理が世界の三大料理だという説が、日本ではまことしやかに流れているが、トルコ料理というのは中東の料理を代表しているというように解釈すべきだろう。ここにインド料理、日本料理、イタリア料理、アメリカ料理を加えると世界のメジャーな料理文化はだいたいカバーできる。

ヨーロッパではよそいきの高級料理はフランス料理で、他国の料理は郷土料理的位置づけであって、日本のように英国料理とかドイツ料理といった形で意識はされず、たとえば、ドイツにドイツ料理屋があるわけでない。

イタリアだけは我が道を歩いて、昔ながらのB級グルメ的な料理が主流だったが、フランス料理と融合した新しい料理が出てきて国際的にも人気だ。また、フランス料理にもエスニックな要素が加わり、一方、世界中でフランス料理の基礎の上に各地の特性を生かした料理が登場し、世界的な人気店がデンマークやスペインにも登場している。

日本がとくにグルメの国であったわけではないが、伝統的に新鮮な魚介類などの素材を生かした料理が得意であるのと、外国の料理に対する好奇心旺盛な国民性も相まって、日本料理もレベルアップしたし、オリジナルに近い世界の料理が食べられるようになったことで、世界的なグルメ大国となった。

中東ではイスラム教が、豚肉や酒を忌避しているという制約があるが、羊の肉や豆類を使った料理が主でスイーツも好まれる。クスクス〔極小のパスタにスープをかける。アフリカのニガリはトウモロコシの粉になる〕やシシカバブなどは世界で広く好まれている。モロッコとかレバノンはフランス料理との交流でレベルが高い。

▲シシカバブ イメージ:PIXTA

ドイツでは、移民が多いトルコのケバブが軽食として人気。インドでも人気が高いインド料理は、小麦生産地の北部では中東料理に近く、稲作が盛んな南部では東南アジアに近いが、広い意味でのカレー味が主体であるのは共通だ。

▲ケバブ イメージ:PIXTA

中華料理はB級グルメ的には強い。しかし高級料理は、希少材料や薬膳効果に傾きすぎて、本当に洗練された料理文化にはなっていなかったことは、ミシュラン三つ星がつく中華レストランが、世界でもほんのわずかしかないことが証明している。

アメリカでは、ハンバーガーなど手軽で万人向けのファストフードにすぐれたものがあるほか、タコスに代表されるトウモロコシや唐辛子を使ったメキシコ風料理も、アメリカ料理の一部になっている。南米ではペルー料理への評価が高い。

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。