機能美を追求したモダニズム建築

産業革命以後の社会に誕生したモダニズム建築は、過去の様式にとらわれず、機能的・合理的な造形を追究して、新建材の特質を生かしたような使用がなされるようになった。

アール・デコは、1925年開催のパリ万国博覧会をきっかけとして、1910~1930年代に世界中で流行した装飾様式で、直線的で機能性重視のデザインが特徴。クライスラー・ビルディング(1930年)は、ニューヨーク・マンハッタンのシンボル的存在(ウィリアム・ヴァン・アレン設計)。アール・デコの建物はインドのムンバイに多く、その代表作としてエロス・シネマ(1938年/ソハラジ・ブドワール設計)がある。

モダニズム建築の三大巨匠は、アメリカのフランク・ロイド・ライト、ドイツのルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、フランスのル・コルビュジエの3人。

帝国ホテル旧館で知られるフランク・ロイド・ライト。彼の作品で代表作となったペンシルベニアの落水荘(1936年)は、滝の上に邸宅をつくり自然と見事に融合している。

▲落水荘 イメージ:PIXTA

取り壊されて再建されたものだが、ミース・ファンデル・ローエ設計のバルセロナ・パビリオン(1929年)は、鉄とガラスと大理石で構成されるモダニズム建築の最高傑作。パリ郊外のサヴォア邸は、ル・コルビュジエが提唱した近代建築の五原則(ピロティ/屋上庭園/自由な設計図/水平連続窓/自由なファサード)のすべての完成度を高く実現。ル・コルビュジエには、ロンシャンの教会やマルセイユのアパートなどもある。

▲サヴォア邸 イメージ:PIXTA

ドイツでは、世界初の本格的なデザイン教育機関のバウハウスをヴァルター・グロピウスが創立し、バウハウス・デッサウ校舎(1926年)を設計した。コンクリートとガラスを多用し、モダニズム建築の代表作といわれる。

ウィーンにあるロースハウス(1912年)は、徹底的に装飾を排除した最初期の鉄筋コンクリート造建築物だ。設計はアドルフ・ロースである。「コンクリートの父」と呼ばれるオーギュスト・ペレは、鉄筋コンクリート造の芸術的な表現を追究した。アール・デコ調の装飾をしたパリ・フランクラン街のアパート(1903年)は、最初期のモダニズム建築。

マンハッタンのフラットアイアンビル(1902年/ダニエル・バーナム設計)は、20世紀のボザール建築を代表する建物だが、三角形の独特なフォルムがアイロンに似ていることから呼ばれる。スパイダーマンなどのロケ地としても有名なフォトスポット。北欧モダンを体現したフィンランドが誇る建築家アルヴァ・アールトのマイレア邸(1939年)は、北欧モダンの傑作といわれ、木の可能性を追究し自然との調和が図られている。

▲フラットアイアンビル イメージ:PIXTA

※本記事は、八幡和郎:著『365日でわかる世界史』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。